おかえり熱海富士…故郷・静岡の御殿場で大相撲春巡業
大相撲の春巡業が11日、御殿場市体育館で行われた。県勢の幕内力士では、熱海市出身の熱海富士(21)=伊勢ケ浜、飛龍高出=が、焼津市出身の翠富士(27)=伊勢ケ浜、飛龍高出=とともに参加。握手会やトークショー、地元の子どもたちとの相撲で会場に訪れた大相撲ファンを沸かせた。本割では関脇・若元春(30)=荒汐=を寄り切りで破った。 青空にくっきり浮かぶ富士山のふもとで、熱海富士が存在感を見せた。満員御礼の垂れ幕が掲げられる御殿場市体育館の本割で、若元春を寄り切りで下し、大歓声を浴びた。「おかえりなさい、と言ってもらって、地元に帰ってきたんだって実感した」。出身地の熱海市と同じ県内東部地区で行われた巡業を喜んだ。 ご当地力士らしく朝から大忙しの一日だった。午前9時半からの握手会でファンと交流をはかったのをスタートに、観衆が見守る中での公開稽古では、大関・豊昇龍との三番稽古で胸を借りた。2勝6敗と負け越したものの、土俵際まで追い詰めるシーンも目立った。 その後、子どもたちと相撲を取り、質問コーナーでは翠富士らと土俵に上がった。好きなスイーツを聞かれ、「熱海プリンです」と即答。兄弟子からの無茶ぶりで自身が出ている永谷園のCMを実演するなど、会場を盛り上げた。照ノ富士の横綱土俵入りでは、太刀持ちを務めた。 今月30日には、夏場所の番付発表が控える。先場所は東前頭2枚目で8勝7敗と勝ち越し。通常の場所なら三役の可能性もある成績だが、今回は、前頭筆頭と見られている。会見で三役に何が大事かと、問われると「稽古です」と、一言。先場所、同じ部屋で弟弟子の尊富士が新入幕Vを飾り、「ちょっとだけ悔しい」と、正直な思いを口にした。ご当地の巡業でたくさんのファンからもらった声援を力に、熱海富士が夏場所で戦後県勢初の三役に挑戦する。 (塩沢 武士) 〇…東前頭5枚目の翠富士も大関・豊昇龍との三番稽古を行った。肩透かしで大関を土俵上に転がす場面もあり、好調ぶりをうかがわせたが、「まだまだです。場所に向けてもっと頑張れたら、と思う」と、控えめ。先場所は12日目に勝ち越しに王手をかけながら3連敗で2場所連続の負け越し。巻き返しを狙う夏場所は「とりあえず、15戦全勝を目指したい」と、でっかい抱負を語った。 〇…飛龍高出身で幕下の大青山(23)=荒汐、本名アスハダ=が、元気な姿を見せた。中国内モンゴル自治区出身で、高校から日本に留学した191.7センチ、156.8キロの巨漢力士は「富士山が懐かしい」と、“がい旋”を喜んだ。22年初場所で初土俵を踏み、先場所は東幕下13枚目で6勝1敗。夏場所に勝ち越せば、新十両が狙える位置まで番付を上げることは確実だ。「先場所のような相撲が取れれば。悔いのない場所にしたい」と、第二の故郷の静岡で健闘を誓った。 ◆御殿場巡業の一日 午前9時に開場してから幕下以下から稽古を始め、十両、幕内の関取へと続く。その間にふれあいイベントとして握手会、力士への質問コーナー、ちびっ子力士との取組。序二段、三段目、幕下の取組後、美声を誇る力士による相撲甚句、禁じ手や珍しい決まり手をコミカルに紹介する初切(しょっきり)が披露された後、横綱・照ノ富士の綱締を実演。その後は横綱土俵入りに続いて、幕内の取組が行われた。
報知新聞社