エクリプス日高が大井川鐡道の全株を取得、完全子会社化へ
北海道で静内エクリプスホテルを経営するエクリプス日高株式会社(新ひだか町、岩崎隆社長)が、同社が90%超の株式を所有する大井川鐡道株式会社(静岡県島田市、前田忍社長)の株式をすべて買い取り、完全子会社化することがわかった。「動く鉄道博物館」として広く親しまれている大井川鐡道。同社では「完全子会社化による鉄道事業への影響はない」としている。 大井川鐡道は2015年5月に地域経済活性化支援機構による再生支援が決定し、エクリプス日高が3億円を拠出して新規発行株式を取得し、90%超の株式を所有する筆頭株主として経営再建に取り組んでいる。 今回、エクリプス日高は5月19日付けで「大井川鐡道株の買い取りに関して」と題した通知を株主に送付、「さらなるコスト削減および意思決定の迅速化のため、大井川鐡道の完全子会社化を行わせていただきたい」と株式の買い取りを表明した。 通知によれば、2015年に大井川鐡道を完全子会社する予定だったが、鉄道事業の存続を優先するため全株式の買い取りは行わず今日に至ったという。通知では「完全子会社化は大井川鐡道の存続に必要不可欠」としている。 大井川鐡道によると、エクリプス日高以外の株主は1500に及び、その中には中部電力や静岡銀行などの法人のほか、自治体も含まれている。 同社は1925(大正14)年に創立し、地域の交通輸送機関として発展してきた。そのため個人で株式を所有している地域住人なども多く、創立時に発行した株式を現在も所有している人もいるという。 エクリプス日高は、株式の90%以上を保有する特別支配株主となることから、今回の請求は会社法が規定する株式等売渡請求に当たり、大井川鐡道の取締役会は今回の株式売渡請求を5月16日の取締役会で承認していることから、通知に記載の6月16日にエクリプス日高は全株式を取得することになる。大井川鐡道では例年6月に株主総会を開催しており、株主総会前に株式取得を進めたものとみられる。 今回の株式買い取りについて、大手企業等には事前の説明が行われたようだが、個人株主等への説明はなく、突然の通知となったことから、株主の間には戸惑いも見られ、大井川鐡道には連日、説明を求める電話が寄せられ、職員が対応に当たっている。 千頭駅以降の井川線は、中部電力の資産である線路や駅舎を使用して大井川鐡道が鐡道事業を担っている。買い取りによって、中部電力が所有する株式はエクリプス日高に移行することになるが、大井川鐡道によれば井川線の鉄道事業は1959(昭和34)年の契約に基づいており、株式がエクリプス日高に移っても鉄道事業に影響が出るものではないという。