超大物コピーライターから異色のヒップホップクルーまで “業界外”出身のクリエイターが作ったゲームたち
一言で「ゲーム」といっても、それを構成する要素は多分にある。メカニクス、グラフィック、プログラム、UI、音楽……あらゆる分野の才能を要求し、それらが素晴らしいバランスで組み上がっているのがゲームというものだ。 【画像】いまも色褪せない名作『MOTHER』のスクリーンショット そこで今回は、ゲーム業界とは異なった分野で活躍し、満を持してゲームを作ることになったクリエイターたちを紹介しよう。 ■MOTHER カルト的人気を誇る任天堂のRPG『MOTHER』。ゲーム業界外のクリエイターの力と聞いて、この作品を真っ先に思いついた人も多いのではないだろうか。 本シリーズのシナリオを担当する糸井重里氏は、70年代から幅広く活躍していたコピーライター。沢田研二の作詞、矢沢永吉『成りあがり』の構成と編集、西武百貨店のCMのキャッチコピーなど数多くのキャリアがある。 本作は当時としては相当珍しい作りだ。超能力を宿した少年たちがアメリカっぽい街のなかを冒険するという、剣と魔法のファンタジーであったRPGに対するカウンターとして評価された。現在でも多くのファンがいるシリーズである。 ■HUMANITY 柴犬が自我を失った人々を連れて、特定の位置まで誘導するという一風変わったパズルゲーム『HUMANITY』も注目したい。 本作は中村勇吾氏率いるデザインスタジオ「THA.LTD」と、『Rez Infinite』や『テトリスエフェクト』などで知られる水口哲也氏率いる「Enhance」がタッグを組んで作られたゲームだ。 THA.LTDは岡村靖幸のMVなど、ユニークな映像メディア作品を多く作り出してきたスタジオであり、水口氏と組んでこういった尖ったパズルゲームを作るのは、たしかに水が合うといった感じがする。 大量の人間が行進していく様を眺めながら、不思議な気持ちに浸れる素晴らしい一本だ。 ■ブラザーズ:2人の兄弟の物語 危篤の父親のために、薬を探しに行く兄弟たちを描いた3Dアクションアドベンチャー『ブラザーズ:2人の兄弟の物語』。それぞれのアナログスティックが兄弟たちに対応しているのが面白いところだ。 本作のディレクターはレバノン出身の映画監督、ジョセフ・ファレス。2000年から映画を撮り続けてきたが、2013年からゲーム業界に降り立った。 彼の最新作である『It Takes Two』は2021年のThe Game AwardsでGame Of The Yearに選ばれている。今もっとも注目されているクリエイターのひとりだ。 ■SONOKUNI 本作はバイオテクノロジーが極限まで発達した日本神話の世界を舞台に、タケルという男が民族同化を迫る者どもを薙ぎ倒していく見下ろし型アクションゲームだ。 制作を進めているDON YASA CREWはなんとヒップホップクルー。コロナ禍で活動が縮小していたところを、思い切ってインディーゲーム制作に乗り出したという経緯がある。トレーラーにちょくちょく実写のラッパーが映るゲームなんてこれくらいのものだろう。 『Hotline Miami』を彷彿とさせるビビッドな色彩感覚に、コッテリした世界観設定がウリの一作。発売日はまだ決まっていない。遊ぶのがいまから楽しみである。 ■Mountain ただ、山を見つめる。それだけのゲームである。ある程度時間が経過すると、木々が育ち、やがて滅びる。 制作者はデヴィッド・オライリーというメディア・アーティスト。鮮烈な3DCGを残していくなかで、彼はゲーム制作にも乗り出した。といっても、我々がイメージするゲームとはだいぶ異なっていたが。 デヴィッド・オライリーは『Everything』という何にでもなれるゲームも制作している。それこそ、原子レベルから宇宙規模まで、あらゆるものになって動き回ることができるゲームだ。メディア・アートの文脈で構築されたゲームの世界に興味がある人は、ぜひともチェックしてみてほしい。 以上、ゲーム業界の外からやってきたクリエイターたちの作品を特集させていただいた。
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