カープ島内 新井監督に恩返しの胴上げを 昨季終盤不振時に「何も変えるな」 背中押されて初タイトル
広島・島内颯太郎投手(27)が19日、デイリースポーツのインタビューに応じた。昨季は自身初のタイトルとなる最優秀中継ぎ投手賞を獲得。躍進を遂げた昨季終盤には、自分を変えない大切さを新井貴浩監督(47)から説かれた。苦しい時に背中を押してくれた指揮官への恩返しを誓いつつ、フル回転でチームを支え、入団以降初の優勝を勝ち取る意気込みも語った。 -キャンプ、ここまでの調整は。 「今年はいつもよりも遅めのペースで任せてもらっている。それは初めてのこと。その割にはしっかり自分のボールを投げられている感じはあります」 -自分で考える時間が多いか。 「メニュー的には一緒ですが、実戦に入る期間が遅いので。今までにない経験で最初は難しい部分はありましたが、何とか今はいい調整ができているんじゃないかなと感じます」 -昨季の飛躍でチームでの立場を確立した。心境の変化は。 「まだ、今の立場を守りにいく立ち位置にいない。勝ちパターンの八回(のポジション)だったりを取りに行かないといけない立場にまだいる、と思っている。自分が守りに入ると結果がいい方向に行かない。『本当に取りに行く』ぐらいの気持ちで、がむしゃらにやっていきたい」 -1年間、中継ぎで投げ続ける難しさも感じたはず。精神的には。 「一番苦しかったのは9月頭に3試合連続で失点した試合。勝ちパターンで投げさせてもらってチームの勝敗に関わる場面で投げて、負けにつながった。それは今までなかった経験。最初は気持ちの切り替えが難しかったけど、まわりの先輩、首脳陣に助けてもらったことが大きかった。今年はその経験を生かしたい」 -新井監督から背中を押されたりしたか。 「監督室に呼ばれて、『1年間やっていたら、野手も投手も絶対、そういう時期はある。調子が良くても悪くても、連続で失点したり内容がいいけど打てないとか、そういう時期は絶対あるから気にするな。次の登板からも何も変えず行ってくれ』と言われて。それで肩の荷が下りたというか、フレッシュな気持ちで次の登板を迎えることができたかなと思っています」 -八回のやりがいは。 「ウチの場合は九回は栗林で、去年は矢崎さんも担っていた。僕の中で九回を投げる人が『抑えてくれる』というのがあった。感覚的には『僕が抑えれば勝てる』と。そこがやりがいというか。『ここを抑えれば、チームが勝てる』と思いながら投げて抑える気持ち良さ、みたいなものもあります」 (続けて) 「リードしている八回は相手が負けている場面。相手の圧力をすごく感じながら、自分の投球で抑えることに達成感を感じる。相手の『点を取ってやる』という気迫を感じながら、こっちも気迫でぶつかっていく。そういった部分にもやりがいを感じます」 -ホールド、防御率ではなく登板数にこだわる理由は。 「ホールドは点差によって付く付かないがある。こればっかりは自分一人の成績じゃない。防御率も中継ぎだと1試合の複数失点で高くなりますしね。登板数はチームとして求められてマウンドに上がっている回数。それだけ頼りにされている、いいところで投げている数字だと思うので、個人的にはそっちにこだわりたい」 -プロに入ってまだ優勝を味わえていない。 「僕を含めて優勝を経験したことがない選手がたくさんいる。個人的にもその一員で1年間、優勝メンバーとしてやりたい。仕事を全うして、勝ちの展開なら勝ち越されないようにするとか、そういうところをまた頑張っていきたい」(2面に続く) -新井監督は常にポジティブに「次へ、次へ」と励ましてくれる。そういう土壌で戦ったことで発見や成長はあったか。 「そこまで監督と選手が密に話すことはないと思うけど、新井さんの場合は、選手とのコミュニケーションがすごく多い。そして本音で話してくれている感じがある。それ(監督が取るコミュニケーション)を僕らも首脳陣の考えとして、くみ取れる。それによって次に向かっていきやすいというか。心の底から『次、次、気にするな』と言ってくれるので」 -本音で直接話してくれるからこそ「本当はどう思っているんだろう」と考えなくていい。 「そうですね。しかも打たれた翌日でも、良かった次の日でも、あまり接し方が変わらないというか。どちらの日でも、ジョークを交えた絡みもありますし(笑い)。しっかり野球の話をする時もあります。あまりそこで接し方が変わらないので、僕らとしてはやりやすい環境でした」 -新たに取り組むカーブの習熟具合は。 「まだまだ課題が多い感じがある。16日にシート打撃に投げましたが、ブルペンだけでは分からないところがあった。対打者に投げてみて、もう少し球の質を上げていかないと使えるボールではないと感じた。実戦で投げる以外の日はブルペンに入りますし、そういったところでより多く投げて状態を上げていけたら」 -150キロ台後半の直球が武器。球速が上がったのは福岡・光陵高時代か九州共立大時代か。 「高校時代は140キロちょっと。一番球速が伸びたのは高校ですけど、150キロ台に乗ったのは大学生の時。伸び幅で言うと高校だけど140キロで速いとは言わないと思うので、大学ですね」 -きっかけは。 「体重を増やしました。本当に体が細かったので。大学の先輩に朝と夜それぞれご飯3杯ずつ食べるように言われて、そこから体重が増えて年々、球が速くなった。ウエートもしていたけど、そこまで精力的にやっていなかった。僕の中では食事で体重を増やしたことが大きいかなと。10キロ体重は増えました。高校3年生の時に62キロとかだったので。その時から比べると大学では10キロ以上増えている。今はさらに10キロ増えましたけどね(笑い)」 -クローザーへの思いは持っている? 「そこは僕が決めることではない。一番、そこに適任の人がやるべきだと思うし、そこを指名された人がやる場所。『ここを投げたい』というより、言われたところでしっかり(仕事を)全うしたいという気持ちの方が強いですね」 ◆島内 颯太郎(しまうち・そうたろう)1996年10月14日生まれ、27歳。福岡県出身。180センチ、81キロ。右投げ右打ち。投手。光陵、九州共立大を経て、2018年度ドラフト2位で広島入団。19年3月30日・巨人戦でプロ初登板。昨季は自己最多の62試合に登板し、3勝3敗2セーブ39ホールド、防御率2.31で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。背番号43。