原動力は「精神と時の部屋」 村上隆さんのドキュメンタリーを放送
現代美術家の村上隆さん(62)の創作現場に密着したドキュメンタリー「フロンティア 夢見る“怪物”村上隆」(NHK BSで4月23日午後9時)が放送される。取材会に出席した村上さんは「(同時期の取材者に)ユーチューブの制作スタッフもいたが、比べてもらうと違いが見えて面白い。クオリティーの高いドキュメンタリーのプロの仕事を堪能してほしい」と話した。 【写真まとめ】ライフワークについて語る石丸幹二さん 村上さんは現在、国内では8年ぶりとなる大規模個展「村上隆 もののけ 京都」(9月1日まで京都市京セラ美術館)を開催中。カメラは準備が本格化した2023年11月下旬から、同展が開幕した24年2月まで村上さんを追いかけた。総数約170点のうち、約160点の新作を制作するため、埼玉県内の工房に籠もり、約350人のスタッフと分業体制で作業を進める姿や、人工知能(AI)に絵を描かせてアイデアの参考にする手法など、創作の舞台裏が明かされる。 取材会で創作の原動力を尋ねられると、「僕の答えは、『ドラゴンボール』を読んで。悟空らが修行をしている『精神と時の部屋』を作ればいいんだよ」と即答。「お坊さんが修行している状況と同じように、脳をどう覚醒させ、フリーな状態にしていくか。追い詰められている状況を作るのが我々の努力ポイント」と明かし、「そのために会社を作り350人を抱えています」と苦笑した。 ドキュメンタリーの取材を受けることが少ない村上さん。今回、制作者に示された条件は「アイデアを練っていることがあるので制作中はしゃべりかけないで」だったという。 そのため、創作の模様は「とにかく記録することだけを考えた」とNHK京都放送局の三浦規義ディレクター。村上さんの話は別の機会にまとめて収録し、村上作品の評価が高い欧米の専門家や、村上さんにミュージックビデオのアニメ制作を依頼した米国のシンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュさんのインタビューで補強した。プロデューサーを務めた同放送局の日比野和雅・放送部長は「逆にドキュメンタリーの原点のような作品になった」と胸を張っていた。【佐々本浩材】