「睡眠時間」理想と実際の差が大きいと“うつ傾向が増加” 「過労死等防止白書」発表
政府は、過労死を防ぐため、睡眠の傾向やハラスメントなどについてまとめた白書を発表しました。その中には、理想とする睡眠時間と実際の睡眠時間の差が大きくなるほど、うつの傾向が増えるといった調査結果が盛り込まれています。
政府が発表した「過労死等防止白書」によりますと、昨年度、過労が原因の労災と認定された患者や死亡者のうち、脳や心臓の病気の人は194人で前年度より22人増えました。精神障害の人は710人で、前年度より81人増え、4年連続の増加です。一方、自殺した人や自殺未遂の人で過労による労災認定されたのは67人で、前の年度より12人減り、3年連続の減少です。
■睡眠時間…理想と実際の差が大きいほど、「うつ」傾向に
今年度の白書では、過労と関係するといわれる睡眠の実態を調べるため、会社員や自営業者、役員など含む就業者を対象にしたアンケートの結果が盛り込まれました。理想とする睡眠時間は7時間から8時間未満と答えた人が最も多く45.4%で、実際の睡眠時間は5時間から6時間未満と答えた人が最も多く35.5%でした。そして、睡眠と「うつ」との関係を調べたところ、自分が理想とする睡眠時間よりも実際の睡眠時間が多い人では、うつ傾向やうつ病の疑いがある人は31.6%で、実際の睡眠時間が理想よりも1時間不足していると答えた人では、うつ傾向やうつ病の疑いがある人はあわせて37.8%、2時間不足と答えた人では52%と半数を超え、3時間不足と答えた人では62.9%にのぼり、睡眠不足が深刻化するほどうつ傾向やうつ病の疑いの人が増える傾向がわかりました。 厚生労働省は「睡眠の不足感が増すと、疲労の蓄積につながる。しっかりと睡眠を確保することが必要だ」とし、対策の一つとして「勤務間インターバル制度」を挙げています。この制度は、終業時刻から次の始業時刻まで一定時間以上の休息時間を設けるもので、たとえば、ある企業がインターバル11時間と設定した場合、残業で夜11時まで勤務した人は、翌朝の始業時間を午前10時とする、といった仕組みです。「勤務間インターバル制度」について、政府は2025年度には、企業の15%で導入することを目指していますが、今回の白書によると、2022年1月時点で、導入済みの企業は5.8%に過ぎず、この制度を「知らない」と答えた企業の割合はむしろ増えていて、大きな課題だとわかりました。