綾瀬はるか×上白石萌歌が作り上げてきた愛のカタチ お正月だからこその『ぎぼむす』FINAL
亜希子が義母として担う最後の役目
いきなり結婚とはどういうことなのか……は、本編をぜひ楽しみにしてもらいたいところ。それと同時に、このドタバタ展開を通して注目してもらいたいのが、亜希子とみゆきの関係性の変化だ。これまで亜希子はみゆきを「守り、育てる」という保護者の立場でいたが、本作ではその限りではなさそうだ。 自転車の乗り方を教えたり、働く親の背中を見せたりと、これまでできるかぎりのことを全力でみゆきに与えてきた亜希子。だが、当然ながらみゆきもいつまでも子どもでいるわけではない。 親としては、これまでの人生経験から「こうした方がいい」と子どもに道標を示したくなるけれど、自らの意思で新しい道を切り開いていこうという若者の勢いはすさまじい。そして最初こそ危なっかしく見える足取りだとしても、歩き始めたら驚くほどたくましく進んでいくことも。 これから自分の人生を歩んでいくみゆきにできることと言ったら、その意思を尊重して応援することくらいだ。そんな親としてできることが少なくなっていくのは、これまでの苦労が報われた喜びを感じる一方で、役目を終えていく寂しさも感じられる。 以前、亜希子はみゆきに与える行動を「してあげたいからしている、自分のエゴなのだ」と話していたことがあった。でも、そんな亜希子にみゆきは「それを愛っていうんだよ」と言い換えた。「してあげる愛」から、「見守る愛」へ。子どもの成長に伴って、親が与えられる愛も変わっていく。子どもの巣立ちという大きな節目で、亜希子が見せた義母としての愛のカタチに注目だ。
2024年のお正月だからこそ、考えたい「家族」
この世界は、喜ばしいことと悲しいことが表裏一体になっている。生があれば必ず死があり、出会ったということはいずれは別れがやってくる。だけど、誰かと一緒ならその荒波を超えていくのも心強い。その繋がりが「家族」と呼ばれるものなのではないか。 良一がみゆきを亜希子に託したことで、血縁関係がなくとも家族として幸せな時間を過ごしたように。いつか、その家族の誰かがこの世界を旅立つことになったとしても、共に涙を流し、一緒に小さな奇跡を探して笑顔を浮かべる。1人でも生きられる現代において、新しい家族を築いていく理由とはそんな希望を抱けることなのではないだろうか。 今作でみゆきは、大樹と新しい家族を作ろうとしている。それは、亜希子との家族の終わりではなく、その続きとなるものだ。そして、同じように大樹にとっても自分を育ててくれた家族の先に、みゆきとの将来がある。そこには亜希子とはまた異なる大樹の母・博美(松下由樹)なりの葛藤も描かれていく。 家族となると、当事者カップルだけでは済まない問題も出てくる。赤の他人が家族となってつながるのだから、それは簡単なことではない。そして、その難しさは血の繋がらない義母と娘として歩んできた亜希子とみゆきが一番知っている。 だから、彼女たちはいつも気持ちいいほどにぶつかり合い、泣いて、笑って、小さな奇跡を集める大切さを私たちに伝え続けてきた。そして同じことで喜び、悲しめる新しい家族ができることは改めて「おめでたいことなのだ」と気づかせてくれるのだ。 2024年のお正月は、3年ぶりに帰省をするという話も多いと聞く。そんな家族について今一度考えるタイミングに、受け継がれていく愛のリレーを描き切った『義母と娘のブルースFINAL2024年謹賀新年スペシャル』をぜひ堪能してもらいたい。
佐藤結衣