進化する「富士総合火力演習」の主要装備品を間近で見たら…
機体の先端には、ローマ字で「MAKOTO OZAKI」と人名らしきものが印字されていた。これは、この機体の整備を主に担当する「機付き整備員」の名前だという。複数人で協力して整備は行うのだが、主たる隊員の名前を印字することで、整備に対する責任をより感じてもらえるのだという。どれも同じように見える機体の背後に、それぞれを「自分の機」として責任と愛着を持って整備を行う隊員たちの姿を感じた。
■19式装輪自走155mmりゅう弾砲
続いて公開されたのは、19式装輪自走155mmりゅう弾砲。けん引式の155mmりゅう弾砲FHー70の後継で、2023年から部隊配備が始まっているものだ。ドイツ製の8輪式大型トラックの荷台に、国産の大砲である155mmりゅう弾砲を組み合わせたもので、高速道路も自走でき、機動性に優れているのが特徴だという。また、舗装した道路でも発射が可能で、市街地でも運用できるようになった。
射撃操作部を見せてもらう。安全カバーのついた黒のボタンが砲弾を発射するためのボタンで、その上にある赤ボタンを押せば緊急停止する。ボタンの左側にある電話は射撃を指揮する部隊とつながっていて、そこから、目標物の情報やそこに着弾するための角度や向きが伝えられるのだという。初めてボタンを押したときの心境を隊員に聞くと、「(緊張などは)特に何も感じなかった」と言った。発射を司る「照準手」になるまで、入隊から5、6年。その間に、砲弾を撃つことは「日常」になるのだろう。
■砲撃を縁の下で支える「対迫レーダ装置」
最後に案内されたのが、対迫レーダ装置JMPQーP13、迫撃砲の弾着点を特定するレーダーだ。火力演習の観客席からは見えないほど離れた草むらのなかにその装置はあった。装置から電波が出ていて、砲弾が通過したときの位置や向き、速さなどから弾着点を算出するという仕組みだという。敵が撃った砲弾だけではなく、味方の砲弾についてもどこに弾着するか、目標位置に到達するか測るために使われる。正確な射撃のためには「不可欠」で、火力演習中も、このレーダ装置の弾着点情報を使って、砲弾の照準の微修正を行ったという。正確な砲撃は、離れた縁の下で支える装備があって成り立つのだと感じさせられた。