リニア中央新幹線工事差し止め訴訟、山梨・甲府地裁は住民の請求棄却
原告はすぐ控訴を表明
判決で裁判所はまず「(リニア工事には)高度な公共性、公益性が存在する」と認め、騒音については「何かしらの騒音被害が生じる」としながらも「騒音レベルは新幹線環境基準(の70デシベル)を下回り、JR東海が家屋の防音工事等の措置を講じる」ので、工事を差し止めるまでの「違法性が存在するとは認められない」と結んでいる。振動についても「一定の振動による被害が生じる」と認めながらも「被害の危険性が存在すると認めるだけの証拠はない。差し止めるだけの違法性は存在しない」としている。 また、たとえば秋山さん宅から見える富士山がリニア高架橋で見えなくなるなどの眺望喪失の問題も「原告は住宅地に住み、複数の住宅が隣接しているのだから、眺望が法的に保護される対象とは言えない」と、秋山さんにすれば「あんまりだ」との判断をしている。 日照阻害にしても、JR東海が「補償(筆者注:照明代金やストーブや燃料の購入費など最大で30年間の補償)を講じる」から違法行為ではないとした。 どの原告にも共通する不動産価格の下落については「リニア工事で不動産価格が下落している」と認めつつ「賠償や補償で補える」から「原告の受忍限度の範囲にとどまる」と結論付けた。 つまり、原告の訴えは何一つ認められなかったのだ。 判決後の報告集会では、どの原告も「これほどひどい判決とは思ってもいなかった」「落胆した」と、新田裁判長に期待した分だけやるせなさをにじませていた。 ただし判決1週間前、原告6人は「もし敗訴だったら」に備えて話し合いを行なっていた。そこで出た結論は「闘い続ける」だった。 はたして判決当日の5月28日、原告は控訴を決めた。闘いの場は東京高裁に移る。
樫田秀樹・ジャーナリスト