現役最年長棋士・青野照市九段が引退。ベテランが活躍する将棋界の引退条件や年長棋士の記録を紹介!
6月に現役最年長棋士であった青野照市九段が71歳で引退した。現状の制度で70歳を超えるまで現役でいられるのは素晴らしい記録であるのだが、まずは将棋界の引退条件について説明していきたい。 【写真を見る】 将棋界の現役続行基準は基本的に順位戦によって決まる。一番下のクラスであるC級2組で降級点が3つ溜まるとフリークラスへ降級となる。このフリークラスでは既定の条件を満たせば順位戦に復帰することができるが、10年経過、もしくは60歳になると引退となる。よって60歳を超えた棋士はC級2組から降級となると即引退となり、青野九段もこれに該当した。なお、順位戦に在籍している間にフリークラスにいくことを自主的に宣言すれば在籍期間(15年+その時点で在籍可能な順位戦年数)や強制引退までの期間が少し長くなる(最高65歳)が、その代わりにどれだけ活躍しても順位戦に復帰できなくなる。現役では森内俊之九段がA級から降級した際にこのフリークラス宣言をした。 なお、先日に紹介した三段リーグでの次点2回獲得やプロ編入による新人のフリークラス入りもこの10年引退ルールに該当するため、大体の場合がまず好成績を収めて順位戦への参加が目標となる。 細かい条件としては竜王戦で5組以上に在籍しているなど、順位戦以外にも条件があり、規定を満たしていれば該当棋戦のみ参加を続けられるが、基本は順位戦に参加を続ける必要がある。 他には当然自主的な引退もある。限界を感じたりモチベーションの低下、または健康面によるもの。ほかにも理由は様々あるが、こちらは引退届を出して受理されれば引退となる。 このフリークラス規定により、65歳を超えても現役でいられる棋士は元々の地力が高い証明となる。青野も60歳を過ぎてもB級2組に在籍する強さを見せていたため、この年齢まで現役でいられたわけだ。だが、それでも60代後半になると黒星が続き、C級では粘るのが難しかった。 現役の棋士では谷川浩司十七世名人は今年62歳になったが、B級2組で上位の強さを維持している。先述した自主的な引退を選ばない限りは70歳を過ぎても現役でいる可能性は高いだろう。 将棋界における現役最年長記録は加藤一二三九段の記録した77歳5ヶ月。加藤九段はタイトルを数多く獲得した超一流棋士であり、C級2組から降級するまでとことん戦い抜いた末の記録だ。 なお、昭和の大名人である大山康晴十五世名人は69歳で亡くなるまで現役のままA級に在籍していた。年齢を重ねてからの強さは将棋史でも群を抜いているが、最年長棋士であるためには健康に長生きするのも必要である。 文=渡部壮大
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