U-21が快勝のアジア大会初戦に見せた「2つの顔」
クウェートによる牽制は、試合前から始まっていた。メンバー表に記載されたクウェートの選手たちの身長が極端に低いことに気づく。スタメンのほとんどが160センチ台。これが確かなら、164センチの中島翔哉や168センチの大島僚太と同じぐらいの背丈の選手ばかりということになる。ところが、ピッチに現れた彼らは185センチの鈴木武蔵や186センチの岩波拓也と同じくらいの選手がたくさんいる。やはり、中東のチームはどんなところで撹乱してくるか分からない。 14日、韓国・仁川でひと足先にサッカーから開幕したアジア大会。U-21日本代表は、連覇を狙う初戦でハーフタイムを挟み異なるふたつの表情を見せた。前半に見せたのは「慎重な表情」だ。最終ラインに5人のDFを並べ、5-2-3とも5-4-1とも言えるシステムを採用。守備に重心を置く、手堅いゲームプランでこの一戦に臨んだ。今年1月にオマーンで行なわれたU-22アジア選手権では、イランとの初戦で開始直後からラッシュを浴び、まんまと先制を許している。おそらく、その反省を踏まえてのことだったに違いない。 このチームはベースとなる4-3-3から、システムをさまざまに変更して戦ってきた。5-2-3は4-3-3の中盤の底、アンカーを初めからディフェンスラインに組み込んだもの。「後ろに重心を置き、まずは相手がどういう出方をするのか探りたかった。相手に出て来させるプランを持とうと思った」と手倉森誠監督は狙いを語った。 その前半、やや堅さがあってミスを頻発させたが、攻撃では狙いどおり、シンプルにロングボールを前線へと送ってクウェートのプレスをかいくぐる。攻めあぐねながらも、前半の終了間際には前線に飛び出した大島が原川力のパスを巧みにトラップして左足で流し込み、リードを奪ってハーフタイムを迎えた。 一方、後半に見せたのは「大胆な表情」だ。両ウイングバックはポジションを上げ、両ウイングは中央に絞って3-4-2-1気味のシステムに変更。前半よりもボールをしっかり回して押し込み、コンビネーションでの崩しや2列目、3列目からの飛び出しを増やしてクウェート攻略を狙う。相手の足も止まり、スペースが生まれたこともあって、セットプレーから失点した場面を除いて、後半は日本の一方的なペース。鈴木武蔵が2ゴールを叩きこむと、岩波拓也にもゴールが生まれて、4-1で初戦を飾った。 「パスを繋ぎたい選手たちが多いんですけど、自分たちが支配するためにも、まずは背後を狙おうということで臨んでます。自分も含めてミスが出てしまいましたけど、前半はそれが出来たんじゃないかって。一方、後半はスペースが空いたのもあるんですけど、繋いで崩すことが割と出来たのかなって。この1試合でそれが出来たのは大きいと思います」。キャプテンマークを巻いた大島は、手応えを口にした。