交換レンズ1億本のキヤノン 偉業を支えた飽くなき探究心
また、デジタルの普及が開発陣とのチームワークを強固なものにしていった。商品企画から出される提案は、低価格で高機能なもの。開発陣にとって時間も労力も強いられる要求で、ケンカの1つや2つ、あったのではと想像したが実は、その逆だった。もともとフィルムカメラ時代は、他社製のフィルムを同社製造のカメラで使用して撮影する。そのため、他社製の商品に合わせて設計する必要があったが、デジタルカメラはそれこそ、キヤノン製のプリンタでアウトプットできる。「自分たちで“映像エンジン”をつくり、EFレンズとの関係をつくる仕事になっていった。大変だったが、自分たちでレンズも作り、カメラも作り、撮像する。自社製品で完結できることに開発のメンバーも喜んでいた。『自分たちでやるぞ』、という気概をもっていた」(家塚さん、家村さん)と、笑顔をみせる。高い志は、ものづくりの国ならでは、かもしれない。 次に来る時代は、一眼で動画を撮影する時代だと予測する。「2013年からエントリークラスのカメラ・レンズにも、動画が撮影できてピントを追い続けられるように対応した。動画を一眼で撮影する時代がいずれ来る、ということで始めています」と家塚さん。写真産業の一時代を築いたアメリカ・コダック社の栄枯盛衰に代表されるなど激動の時代の中で、常にリードしてきたキヤノン。その秘訣は、商品に携わる全てのスタッフのこだわりと飽くなき探究心が成し遂げている。