どうする? 相続税の申告が間に合わない
相続の手続きには期限があります。「相続税の申告と納税は亡くなってから10ヶ月以内」この10ヶ月の時間は思ったより短いので、間に合わない時の対処法も知っておくと安心です。
父親が亡くなって2年以上経過しているのに
相続手続きを経験された方は、口をそろえて「大変だった」とおっしゃいます。大変な理由は主に2つあります。1つ目は手続きに必要な書類がたくさんあり、面倒なこと。2つ目は、期限が決まっているので、何かと急かされることです。 知人のFPからこのような話を聞きました。 相談者(以下Aさん)は2年半前に父親を亡くされました。相続人は母親とAさんの2人です。思っていたよりも父親の財産が多く、相続税がかなり発生します。配偶者には税額軽減措置があります。 相続財産から、法定相続分相当額か1億6000万円のいずれかを相続税の計算から控除できます。Aさんの相続でも、母親が財産を相続することを優先すれば、税金は少なくて済みそうです。 ですが、母親の財産を増やしてしまうと、次に想定される二次相続(母親が亡くなった時の相続)では、相続税が大きく膨らむことが予想できます。相続人がAさん1人なので、基礎控除額は3600万円です。母娘の仲は良好なのですが、税金を考えると、どのような分け方が良いのか悩みは尽きないようです。 筆者はこの話を聞いて疑問を持ちました。父親が亡くなったのは2年以上前です。税金がかかるのに、申告期限は過ぎています。分割協議ができていないけれど、税金は納付したということでしょうか。 謎の答えは、遺産分割協議書が未了の状態で相続税申告をするワザを使ったそうです。
分割が間に合わなくても、申告&納税は期限内に必要
通常の場合は、被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告と納税をすることが決められています。分割協議が終わっていなくても申告と納税はしなくてはいけませんので、民法で規定された相続分もしくは包括遺贈の割合に従い、財産取得をしたとして相続税の計算を行い、そして申告と納税をします。 実際に財産の分割が行われ、その分割に基づいた税額が申告した税額と異なる場合は、実際の税額で「修正申告(実際の税額のほうが多い場合)」「更生の請求(実際の税額のほうが少ない場合)」を行います。 ここで、注意点があります。10ヶ月以内にする申告においては、分割ができていないという前提がありますので、相続税の特例である“小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例”や“配偶者の税額の軽減の特例”などは適用できない申告となります。 つまり、納税資金を多く用意する必要があるということです。「修正申告」または「更生の請求」の際は、上記の特例を適用できますが、申告期限から原則3年以内に分割があったケースに限られますので留意しましょう。 冒頭に登場したAさん、3年の猶予を得たのでじっくり考えられると思っていましたが、その猶予期間の期限も迫ってきたので、いよいよ結論を出す時がきたという状態であることが分かります。