清酒の旧酒蔵が21年ぶりに復活。歴史的複合施設〈伊東合資〉が愛知県半田市にオープン
コロカルニュース
■愛知県西部の小さな港町・亀崎に誕生した新スポット 愛知県の西部に位置する知多半島。海に囲まれた、温暖な気候で知られています。いくつもの市や離島からなるこの地域で、漁業や醸造業、海運業で栄えたのが半田市の「亀崎(かめざき)」エリアです。 【写真で見る】季節食材とお酒のペアリングが楽しめる〈Sake Cafe にじみ〉のランチセット 2024年1月20日、この亀崎で200年以上続く老舗の日本酒醸造元・伊東株式会社の旧酒蔵が歴史的複合施設としてオープンしました。 かつては、40ほどの酒蔵や百貨店、劇場があるような繁華街だった亀崎。1788年からつくられ、全国の人々に愛される銘酒もありました。それが、〈敷嶋〉です。 〈敷嶋〉は仕込みにミネラル豊富な井戸水を使っており、独特のキレが特徴。かつては江戸へ大量に出荷された、亀崎と中部地方を代表するお酒でした。敷嶋を製造していた伊東合資会社は亀崎のどこよりも広大な酒蔵を持ち、敷地内に銀行を併設していたことも。地域のシンボルであり、地元の人々が集まる寄り合いどころでもあったのです。 しかし近年の清酒需要低下を受け、伊東合資会社は2000年に酒造免許を返納。酒蔵も売却され、〈敷嶋〉の歴史も幕を閉じました。時は流れ2014年。祖父の死をきっかけに酒蔵の復興を決意したのが9代目・伊東優さん。11年間勤めた会社を辞め、〈敷嶋〉の復活を目指して、酒造りの道へ飛び込みました。 2021年には酒造免許を再取得し、酒蔵も買い戻しました。新たに製造工場も建てて、再び酒造りをスタートさせます。そして今回、「建物の一部だけでも活用し、再びたくさんの人が集まる場所にしたい」との願いで、複合施設のプロジェクトをスタート。旧酒蔵を改修して、3つの店舗が入る複合施設へと生まれ変わらせたのです。 ■古くて新しい魅力を感じる、個性的な3軒が並ぶ 旧酒蔵の中に店を構えるのは、〈Sake Cafe にじみ〉と〈蔵の店 かめくち〉、〈Restaurant gnaw〉の3軒。いずれも、〈敷嶋〉と地元の食材の魅力を体感できるメニューを用意しています。 〈Sake Cafe にじみ〉で楽しめるのは、季節の食材とお酒のペアリング。ランチタイムには、知多半島の食材をふんだんに使った料理の数々と、〈敷嶋〉を始めとしたお酒やノンアルコールドリンクが一度に味わえる「にじみペアリングランチセット」(2500円)も登場します。カフェタイムはティーペアリングで3煎までお茶が味わえて、夜は予約限定のディナーコース(3500円・飲み物付)も楽しめます。前菜は月替わりで、何度訪れても違う味に出合えるでしょう。 〈蔵の店 かめくち〉は、「酒蔵がこの町にあってよかった」をコンセプトとした、〈敷嶋〉や地元で使われている調味料などを購入できる日用品店。お買い物のほか、好きなお酒3種類の飲み比べもできます。近く、お惣菜の販売も始まる予定です。 店名には、「亀崎の入り口」と「搾りたての原酒の一口目」というふたつの意味が込められています。亀崎の人々の暮らしを感じながら、地元のいいものに出合える空間です。 〈Restaurant gnaw〉は、「キロメートル・ゼロ」(地産地消)の完全予約制レストラン。知多半島で採れた食材のみを使用し、知多半島のリアルな旬を反映したコース料理(ドリンク代込み19800円)をアルコール・ノンアルコールそれぞれのペアリングで堪能できます。 ■ますます開かれた酒蔵を目指して 「この地域に、酒蔵があってよかった」と思われるような場所にしたいと、伊東さんはイメージを膨らませています。店舗のオープンと同時に、里山をイメージした庭園の整備も実施。地域の方がふらっと訪れることができるように改修をしました。旧酒蔵はマルシェ等のイベント開催時に開放。今後は、定期的な旧酒蔵の案内ツアーも予定しています。かつてのように人々が集まる場所になる日は、すぐそこかもしれません。 information 伊東合資 住所:愛知県半田市亀崎町9-111 営業時間:店舗により異なる 定休日:月曜 writer profile Hiroko Shimokawa シモカワヒロコ しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。