知名度アップは供託金以上の効果? 都知事選、50人以上が出馬か
任期満了に伴う東京都知事選(7月7日投開票)は20日告示される。3選を目指す現職の小池百合子氏(71)や、参院議員の蓮舫氏(56)ら50人以上が出馬表明しており、過去最多だった前回2020年の22人を大幅に上回りそうだ。なぜ都知事選に名乗りを上げる人がこれほど多いのか。 【写真】歴代の東京都知事 都選挙管理委員会によると、17日時点で立候補に必要な書類を受け取った人は82人。このうち53人が届け出書類の事前審査を終えており、立候補の意思が固いとみられる。 都知事選は戦後21回あり、これまで候補者数が最も少なかったのは石原慎太郎氏が再選された03年の5人。石原氏の4期目途中の辞職によって統一地方選と別日程になり、9人が立候補した12年(猪瀬直樹氏当選)以降は、14年(舛添要一氏当選)16人▽16年(小池氏当選)21人▽20年(小池氏再選)22人――と増加傾向にある。 今回の都知事選には小池氏と蓮舫氏の他に、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)▽元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)▽タレントの清水国明氏(73)▽AIエンジニアの安野貴博氏(33)――らが立候補を表明している。また、政治団体「NHKから国民を守る党」が関係団体を含めて24人の擁立方針を示した。 出馬を表明した人の職業は、医師▽弁護士▽公認会計士▽個人投資家▽国際創造学者▽インターネットコメディアン――などと多岐にわたり、ネットメディアで発信する人も目立つ。 前回の2倍超の立候補が見込まれる都知事選の現状について、選挙制度に詳しい東北大大学院の河村和徳准教授(政治学)は「ネット収入で生計を立てる人が増える中、選挙を利用して知名度を上げる方法が知られ、個人の利益のために選挙に出る人が増えている。そのため、都民というよりネットユーザーに向けて情報発信するやり方が目立つ」と分析する。 公職選挙法は売名目的など立候補の乱立を防ぐために候補者に供託金の納付を義務付けており、都道府県知事選では有効投票総数の10分の1に届かなかった場合は300万円の供託金が没収される。河村准教授は「昔は没収のリスクが高かったが、今は(出馬後の知名度アップによって)ネット収入で賄えてしまうこともあるのではないか。制度が想定していない事態が起きている」と危惧する。 かつて都知事選に関わった選挙プランナーの三浦博史さんは「有権者にとって候補者や政策の選択肢が増えるのは本来いいこと。しかし、一見すると出馬表明している人たちの主張の違いが分かりにくく、選択肢が増えたとは言えないのではないか。ファッションとしてではなく『東京をこうしたい』という思いを持って立候補してほしい」と話している。【山下俊輔、島袋太輔、竹田直人】