「おぼっちゃんと呼ばれるのは屈辱」2代目社長の苦悩 弱さをさらけ出し、成功コラボへ 2代目お坊ちゃん社長の会・前編
創業者のカリスマに隠れ、周りは「社長の息子」としか見てくれない-。2020年、全国の「2代目社長」が集うコミュニティ「2代目お坊ちゃん社長の会」が立ち上がった。会を創設し、代表理事として率いるのは、自動車修理会社「京南オートサービス株式会社」(東京都多摩市)の田澤孝雄代表取締役だ。ちょっと自虐的な名前の会だが、ビジネスでは会員同士のコラボを成功させ、成果を上げている。自身も2代目社長の田澤氏に、2代目ならではの悩みや創設の背景を聞いた。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆周りは「社長の息子」としか見てくれない
――自身も「2代目お坊ちゃん社長」で、お父様は不動産業を営んでおられる。 私は、父の意向で早稲田大1年時に宅建を取得しました。 しかし、父への反発心が高まり、弁理士になると決意し、大手電機メーカー「アルプスアルパイン」(東京都)に入社しました。 25歳で弁理士登録し、知財業務のほかVC投資や社内ベンチャー企業の立ち上げや運営などに携わりました。 ――30歳を目前に家業へ入りますが、先代への反発心に変化があったのでしょうか? 私は次男ですが、兄に承継の意思がないと分かりました。 ちょうど子どもを授かったタイミングで、これまで敬遠していた「父という存在」を見つめ、学ぶべきではないかという思いが生まれたのです。 自問自答の末、家業を継ぐ覚悟を決め、アルプスアルパインに辞表を出しました。 でも、反発心はそう簡単には消えません(笑)。 父というより、自分を「父の息子」としか見てくれない周囲への苛立ちが強いのかもしれません。 幼い頃から「お坊ちゃん」と呼ばれることに非常に抵抗感がありましたから。 ――それなのに、「2代目お坊ちゃん社長の会」と名付けた理由は。 いっそ自分で名乗って、ネタにして笑い飛ばそうと。後継者の鍵は「嫌なものほど取り入れる」なんです。
◆「先代への反発心」は2代目共通
――「2代目お坊ちゃん社長の会」の皆さんも、同じように先代への反発心を抱えていますか。 少なからずそう感じますね。2代目の共通の悩みは「権限があるようでない」。 でも責任だけはある。 事業を変えようと提案しても、先代から否定され、手の打ちようがない。 その決断の責任が自分に回ってくるのは、10年後なのか、30年後なのか、明日なのか見えない。 私自身、承継後しばらくは暗闇にポツンと置かれ、見えないゴールを目指してさまよっているようでした。この不安を分かち合い、互いに解決策を見出す会を作りたい。 それが2020年に「2代目お坊ちゃん社長の会」を設立した動機です。 当時、拙著『ビジョン経営革命を起こした2代目お坊ちゃん社長の77の逆襲レター』を執筆中で、担当編集者から「これは2代目の応援本だ」と言われたことも大きかったです。 ‟後継者支援”は、自分が取り組むべきテーマだとスッと腑に落ちました。