星野伸之が考えるオリックスのベストオーダー 西川龍馬が入るクリーンナップ、下位に大砲を置く恐怖の打線
【オリックス打線の強み】 ――オープン戦では、さまざまな選手が複数のポジションを守っていましたね。 星野 調子が悪い選手がいた場合に替えやすいですね。たとえば、宗の調子が上がらなければ、サードに太田椋の起用もあるかなと。太田はバッティングが超積極的なので、1番に入れると打線の起爆剤になり得ます。それと、廣岡大志も状態がいい。内外野を守れますし、さまざまな起用が考えられます。 ポジションがはっきりしているのは、キャッチャー以外は紅林と宗ぐらいでしょうか。頓宮は基本的にファーストですが、DHの場合もあるでしょうし。あとは、福田周平にも奮起してほしいんですよね。昨季は出場試合数がかなり減ってしまいましたが、代走や守備固めのスペシャリストになる気はないでしょうから。 ――打線の軸は森選手、頓宮選手、西川選手に任せる形ですね。 星野 そうですね。森と西川は実績がありますし、バットコントロールは日本でも上位だと思います。頓宮は昨季首位打者を獲りましたけど、活躍できたのはまだ1年。それでも、しっかり技術がついてきた感じがするのでクリーンナップを任せられるかなと。右バッターの頓宮を、左バッターの森と西川で挟むと相手がリリーフ起用で悩むと思うので、こういう並びにしました。 ほかにも、オリックスには中軸を任せられる選手がいます。頓宮の調子が悪ければ、セデーニョをクリーンナップに置いてもいい。あと、杉本が以前のように打てれば4番に置きたいのですが、ここ最近はバットを"振りすぎ"な感じがして......。2021年に優勝した時はいい感じで右打ちができていましたし、逆方向へのホームランも多かったですけど、今はいい時の感覚を忘れてしまったようにも見えます。
――杉本選手を含め、基本は調子のいい選手を優先して使っていく形になりそうでしょうか。 星野 それができるのがオリックスの強みです。ひとりの選手がずっと出続けることが少ないので、疲れを分散しながら戦えます。ポジションを固定し、ケガをしたら代わりはこの選手、という起用法が通常かと思いますが、本当に誰がスタメンになるのかわかりません。昨季、最終的にベストナイン(遊撃手)に選出された紅林が開幕時は二軍だったことも驚きでしたが、その時の調子を見極めて起用していますよね。 昨秋、高校時代にショートを守っていた横山聖哉をドラフト1位で獲りましたが、紅林にとっても刺激になるはず。ショートはほかのポジションに比べて競争が少なかったので、横山の指名は「安心するなよ」という紅林へのメッセージなんじゃないかと思います。 ――先ほど話が出ましたが、本当に切れ目がなくてしぶとそうな打線です。 星野 昨季はチーム本塁打数(リーグトップの109本)が多かったのですが、基本的にはつないでいく野球ですし、状況判断をしながら打てるバッターが比較的に多いと思います。セデーニョは育成選手の時から、キャンプでもセンター返しをしていましたし、チームバッティングを徹底させていますよね。 新外国人のトーマスがどんな指示をされているのかはわかりませんが、チームとしての考えが浸透していると思います。なので、結果がうまくいくかどうかは別として、誰が試合に出ても遜色のない攻撃ができるんじゃないかと思います。 【プロフィール】 星野伸之(ほしの・のぶゆき) 1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo