【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】もう衝撃の連続です『ジョン・レノン 失われた週末』
結局どっちだったの?という終わり方で、観客自身に委ねられている作品
もう一作は5月17日から公開される『ありふれた教室』。今年のアカデミー賞で国際長編映画賞の候補になったドイツ映画です。 正義感の強い若手教師のカーラは、赴任した中学校の1年生のクラスの担任になり、その熱意から生徒はもちろん同僚の先生たちの信頼も獲得します。 ところが、ある日を境に、校内で盗難事件が相次ぎ、カーラのクラスの生徒に嫌疑がかけられます。校長をはじめ、犯人探しに躍起な教員室の面々とは別に、彼女は独自に犯人探しを開始。すると、職員室の防犯カメラの映像に、盗みの瞬間を見つけます。 これで一件落着! と思いきや、ここからがひどい。保護者や生徒から猛反発を受け、同僚の先生たちとも対立し、孤立無援状態に……。サスペンスでもありスリラーでもあり、ミステリーの要素もある力作です。 学校って小さな社会のようですが、そう考えるとここで描かれていることは今の世の中そのまんま。責任逃れやなすりつけあい、猛批判に蔑み。もう本当にひどいのなんの。だけど、こういったことって、あちこちで起きてることですよね? しかも、エンディングが……分からない! 今年のアカデミー賞では脚本賞を獲得した『落下の解剖学』も話題になりましたが、あれもそうでしたよね。最後の最後まで観ても、結局どっちだったの?という終わり方で、観客自身に委ねられている作品。 この作品もそのタイプで本当に見事ですし、考えさせられることで今の社会の問題にも目を向けるきっかけになると思います。ヒントを出すとしたら……邦題は絶妙。真をついているし、観た人がタイトルを反芻すれば「なるほど!」と思っていただけると思いますよ。 (C)2021 Lost Weekend, LLC All Rights Reserved (C) if... Productions/ZDF/arte MMXXII 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『ジョン・レノン 失われた週末』 上映中 『ありふれた教室』 5月17日(金)公開 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。