丹波栗の「母樹」 穂木取り優良な苗に 連載”まちの世間遺産”/兵庫・丹波市
当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、兵庫県丹波市柏原町石戸にある、樹齢50年の丹波栗の「母樹」です。 高級で知られる丹波栗。良いクリ作りには優良な苗がいる。クリは穂木の形質を受け継ぐ。優良な苗作りには、大粒の実がよく採れる穂木が必須。「この辺りには、うちの木の子孫が多い」と石戸観光農園の河村修治さん(74)。河村さんの父が1973年に植えた「銀寄」と「筑波」の特に優秀な木が、丹波市内で植えられる丹波栗の「母樹」だ。 河村さんの園から穂木を取るようになって30年ほどになる。氷上郡時代、山南町の生産者が熱心に育てて販売していた苗木の穂木も河村さんの園のもの。10年前に河村さんらが設立した苗木生産グループ「三栗園」の穂木も同様だ。
母樹は5本。幹回りが約2メートルと、ひと際大きい。「同じように育てているんだから、どれも似たようなもんじゃないのかと言われるけれど、微妙に違う。なりの悪い年でも実を付け、1粒当たり重量が重い」。樹勢を保つため、強めに剪定し、実をならし過ぎないよう努めている。 穂木の採取は冬場。元丹波市栗振興会会長で、日本特産農産物協会認定「丹波栗マイスター」の河村さんが剪定した枝の中から芽がしっかりついているもの、芽と芽の間隔が適切なものを選んで穂木にする。台木に接ぐ春まで冷蔵庫で保管する。 「なぜか1本だけ大きいクリがなる、という木があれば、それを母樹にし、丹波地域に広めればいい。うちの木以外の系統が広がっても面白いのでは」と話していた。