「協調関係は”ガラス”のようなものだ」…集団行動をする上で全員が知るべき科学的「行動原理」
協力関係を維持するのは難しい
そのため、私たちがつづる新たな「系譜学」の冒頭に、人間は協調するのが難しく、一度成立した協調関係を維持するのはさらに難しいと記しておくべきだろう。世界というサイコロは、協力が成功しないようにできている。いかさまだ。非協調が基本形で、協調には理由が求められる。 社会学者のニクラス・ルーマンなら、協力の失敗に比べれば、協力の成功のほうが「ありそうもない」と表現したかもしれない。2人の、あるいはそれ以上の人間が出会えば、「二重の偶発性」が生じる。言い換えれば、無数の出来事が起こりうる。互いを無視するかもしれないし、攻撃するかもしれない。説明のつかない行動をとるかもしれないし、協力しようとして失敗するかもしれない。 「自我」と「他我」がそれぞれの行動をうまく「結びつける」、などと表現されることもあるが、そのような協力関係は数ある可能性の一つに過ぎず、それが起こる可能性は極めて低い。 『なぜ私たちは「人助け」に魅力を感じるのか…何百万人もの集団形成を可能にする“人間の特性”とは』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭