欧米に押し寄せる大量の移民、しわ寄せは地元の納税者に
試される欧州の社会福祉
各市町村が移民の急増に対処する中、私たちは同じような事例を全米各地で目の当たりにしている。ニューヨークのエリック・アダムス市長は昨年夏、最近流入した移民の住宅、食料、医療のために、向こう3年間で120億ドル(約1兆7800億円)を支出する予定だと報告した。これらの費用を賄うため、同市は公衆衛生から教育機関や警察に至るまで、公共サービスを全面的に削減する計画だ。財政的な負担は現実的に、米国民に重くのしかかっている。 ■試される欧州の社会福祉 米国をはるかにしのぐ規模で移民問題が深刻化しているのは、欧州だ。過去10年間で、合法移民と不法移民を合わせて約2900万人の移民が欧州に流入したことで、すでに機能不全に陥っていた移民制度がさらに圧迫されている。移民の社会統合がうまくいかず、住民の間で治安に対する懸念が広がっていることから、社会不安が高まりつつある。これは、移民問題が決定的な問題として浮上している英国の暴動を見れば明らかだ。 投資家は細心の注意を払う必要がある。伝統的に手厚い社会保障や福祉制度で知られる西欧諸国は、この大量に押し寄せる移民を受け入れるのに四苦八苦している。欧州の現状は、適切な規則を定めないまま際限なく移民を受け入れれば、長期的な財政問題に発展しかねないことを示している。 ■少子化対策としての合法移民 とはいえ、合法的な移民の価値を認識することは重要だ。欧米では、合計特殊出生率が人口置換水準である2.1を大幅に下回り、人口増加がほとんど見込めない状況に陥っている。合法的な移民は生産性を維持し、社会保障などの制度を支えるために不可欠な役割を果たしている。 欧米が人口の減少と税基盤の縮小に直面していることは厳然たる事実だ。その解決策は、合法的な移住の経路と社会統合に重きを置く、賢明で持続可能な移民政策にあると筆者は信じている。
Frank Holmes