「こんなに行き当たりばったりでいいのか」電気・ガス代補助再開、首相の独断に自民からも批判
岸田文雄首相が打ち出した電気・ガス料金補助の期間限定再開に、自民党や政府内から批判が上がっている。補助は5月使用分で打ち切ったばかりで、8月分からの再開は党内でも議論されてこなかった。首相の唐突な決断には困惑が広がり「9月の党総裁選対策か」とやゆする声もある。 【図解】電気・ガス料金の負担軽減策のイメージ 「圧倒的に法人とお金持ちに恩恵がある補助は見直すべきだ」「首相が決めたとはいえ、こんなに行き当たりばったりでいいのか」。25日、党本部であった政調全体会議では出席議員から反対の声が相次いだ。最終的に政調会長一任でまとまったものの、出席者の一人は「後味が悪い」と吐き捨てるように言った。 補助を終了したのは、ロシアのウクライナ侵攻で高騰していた液化天然ガス(LNG)や石炭などの輸入価格が、ピーク時の半額程度に落ち着いてきたからだった。このためエネルギー政策を議論する党の経済産業部会では「補助を再開するという議論はなかった」(関係者)。閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」でも触れていない。 首相が再開に踏み切った背景には歴史的円安や高止まりする物価への危機感がある。ただふたを開けてみると、19日の党首討論で立憲民主党の泉健太代表から「復活してはいかがか」と水を向けられたことで「飛びついた」(首相周辺)のが実情。再開の大義に「酷暑乗り切り緊急支援」を掲げたが自民関係者は「冬になったら厳冬だと言って再開するのか」とあきれる。 独断的な政治判断は遠心力になりかねない。経産部会側への根回しは、首相が再開を表明した21日夜の数時間前までなかった。部会幹部は「現場を無視するやり方は許せない」と憤る。経産省関係者も「政府の脱炭素戦略に逆行する。政策的合理性はない」と嘆く。 政調全体会議では出席者から「(支援者から)岸田政権は何がしたいのか分からないと言われる」と不満が噴出した。補助再開は総裁再選に意欲を示す首相にとって「点数稼ぎ」との見方も大きい。自民若手は「場当たり的な政策で支持率は上がらない。そもそも再選するかどうかも分からないのに秋以降の話をするなんて邪道だ」と冷ややかに語った。 (高田佳典、坂本公司)
西日本新聞