決算発表で株はどう動く? 株のプロが決算で着目している1つのポイント
個人投資家の間で大きな支持を集めるベストセラー『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』、待望の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売された。「この株は売り? それとも買い?」「どっちの株を買う?」投資シミュレーションの感覚でクイズを解くうちに株の知識が自然と身につく1冊だ。前作ではチャート分析がテーマだったが、今作では業績や財務の読み方をわかりやすく解説する。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 『株トレ』のクイズに挑戦! J社は、買収を繰り返して成長してきた医薬品企業で予想配当利回り4.2%です。 ちょうど決算を発表したところで、バランスシートと損益計算書は次の通り。 高配当利回り株として投資して良い? ● ヒント:バランスシートと損益計算書の“ココ”に注目! J社の資産を見ると、有形固定資産が小さく、のれんや無形資産(目に見えない価値、超過収益を生む源泉)が大きいことがわかります。 目に見えない資産でも、十分な利益を生んでいれば問題ありません。
正解:J社を買ってよい ● J社はROE20%、営業利益率21%の高収益企業 企業の収益力が高いか低いか判断する際、ROEと営業利益率を計算してください。 J社のROE(簡便法) =純利益÷自己資本×100 =10÷50×100 =20% J社の営業利益率 =営業利益÷売上収益×100 =15÷70×100 =約21% ROE20%、営業利益率21%は、かなり高い水準と言えます。 日本企業は、欧米企業に比べると、ROEがあまり高くありません。 8~10%あれば、高いほうです。20%もあれば、すばらしい。 ● のれん・無形資産が大きいが、収益力が高ければ問題なし J社は、資産の半分近くが目に見えない「のれんや無形資産」。目に見える有形固定資産より、目に見えない価値をたくさん保有しています。 近年は、ネット産業やバイオ産業などでJ社のように目に見えない価値で稼ぐ企業が増えています。 たとえば、GAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)など巨大テック企業は、有形固定資産をあまり持たず、目に見えない技術力やブランド力、顧客基盤、インフラ支配力で稼いでいます。 のれんとは、企業買収で発生する、目に見えない「超過収益力の源泉」のことです。 自己資本50億円(時価ベース)の企業を、80億円で買収したとします。買収金額と自己資本の差額(80億円-50億円=30億円)は、バランスシート上、無形資産または「のれん」として計上されます。 ただし、損益計算書を1期だけ見てもわからないので、「回答不能」と判断した方も正解です。 5年分くらい見ないと安定的に収益を稼いでいるかわからない、と考えた方もいるかもしれません。その通りです。 (本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)
窪田真之