家宅捜査の現場…警察「何人で住んでいるの?」「たまには誰かくるの?」単純な質問の真意【知能犯担当の元刑事が解説】
目の前にいる相手のウソや心理を見抜くには、どうすればよいのでしょうか? 「人間が飾ることのできない無意識な部分」には、心理を読むヒントが隠されています。元刑事・森透匡氏の著書『元刑事が教える 相手のウソの見抜き方』(三笠書房)より一部を抜粋し、今回は「目」に現れるサインを見ていきましょう。
ガサ入れでは「目」に注目
「目は心の窓」と言いますよね。人間の心理は目の動きで読むことができますし、その人が今どんなことに興味を持っているかということもわかります。当然ながら、私も刑事時代は対象者の目を見て心理を読んでいました。 たとえば家宅捜索。通称「ガサ入れ」と呼びますが、私も責任者として行くことがありました。家宅捜索は、裁判所から出た捜索差押許可状を立会人(家人)に示してから捜索が始まります。 責任者の私は何をするかというと、立会人と雑談を始めます。「ここは何人で住んでいるの?」「たまには誰かくるの?」と質問しながら、立会人の目の動きに注目するのですね。 あるとき、立会人と会話をしていると、立会人の目がなぜか天井をちらちら見ていることに気づきました。「天井裏に何かあるかも」と直感的に感じた私は、捜査員に「天井裏をよく見てくれ」と指示したところ、案の定、禁制品が出てきて逮捕したという事案がありました。
脱税疑惑の社長、目で「脱税資金の隠し場所」を無意識に暴露
私は国税の査察官、通称マルサの知人からも同様の話を聞いたことがあります。 その知人がある社長の自宅に捜索に入ったときのこと。 社長を目の前に話を聞き始めると、なぜか落ち着きがない。会話をしながら社長の目を注視していると、窓の外の庭をちらちらと見ている。 「もしかしたら庭に何かあるのかも?」と直感が働き、そのあと、庭の池の脇を掘り起こしたところ、脱税していた現金の束が発見されたそうです。 人間の心理として隠匿(いんとく)場所を無意識に示してしまうといういい例です。
スリや痴漢には「特有の目の飛ばし方」がある
また「スリ眼」という言葉を聞いたことがありますか? 実はスリには特有の目の飛ばし方があります。通常、買い物客の視線の先には何があるでしょうか? それは「商品」です。これは当然ですよね。 ところがスリが興味のあるものは、お客様の「カバン」です。ですから買い物客の中からスリ特有の目の飛ばし方である「スリ眼」を見つけてスリを捕まえるのです。 これは「痴漢」にも言えます。ちなみに痴漢は「エロ眼」と言います。 通勤ラッシュ時、通常の通勤客と明らかに違う目の飛ばし方をしている男がいます。駅のホームにいる女性の足ばかり見ている男がいたら、それは痴漢や盗撮犯に間違いないわけです。 実は刑事はいろんな場所に紛れ込み、目の動きで犯罪者を見つけているんですね。