めるる、松下洸平、杉咲花…偶然か必然か「春ドラマ」で“記憶喪失”が被りまくった「シビアな事情」
事故で記憶を失う主要人物たち
4月も残りわずかになってようやく2024年の春ドラマが揃おうとしているが、現在ストーリーや演じる俳優などではない意外な点での反応が大きくなっている。 【一覧】「現場で好感度の高い女優ランキング30」最下位だった「女優の名前」 それは「記憶喪失(記憶障害)という初期設定がかぶり過ぎている」こと。 まず9日スタートの『くるり~誰が私と恋をした? ~』(TBS系、火曜22時)は、「主人公・緒方まこと(生見愛瑠)が事故で自分にまつわるすべての記憶を失ってしまうが、そんな彼女の前に3人の男性が現れる」という設定。 次に15日スタートの『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系、月曜22時)は、「主人公・川内ミヤビ(杉咲花)が事故で脳を損傷して、『過去2年間の記憶がない』『今日のことも明日にはすべて忘れてしまう』という記憶障害を抱えている」という設定。 さらに19日スタートの『9ボーダー』(TBS系、金曜22時)は、「主人公・大庭七苗(川口春奈)と惹かれ合うコウタロウ(松下洸平)は自分に関するすべての記憶を失っている」という設定だった。 「記憶を失っている」という初期設定が丸被りであり、その印象を決定的にしたのが、22日放送の『366日』(フジテレビ系、月曜21時)第3話。最後の次回予告に、事故で頭部に外傷を負い、意識不明の水野遙斗(眞榮田郷敦)が目を開けたものの、うつろな表情で不思議そうに周囲を見渡すカットがあり、「また記憶喪失?」「(恋人の)明日香のことを覚えていないのでは?」などの声がネット上に殺到した。 なぜ記憶喪失という極端な設定が1クールの中でこれだけかぶってしまったのか。
ドラマ性、ミステリー、ヒューマン
記憶喪失という設定のメリットは、登場人物の人生をドラマティックなものに見せられること。「普通の人生を送っている人が、記憶を失うことで日常が一変してしまう」という展開はドラマティックで刺激が強く、「序盤から視聴者を引きつけやすい」とみなされている。 もう1つのメリットは、「自分が誰で、どんな性格や経歴なのか」「どんな家族、友人、恋人がいて、どんな関係性なのか」「どんな仕事をしていて、どんなスキルを持っているのか」などを探し出すミステリーの要素を加えられること。加えて、「記憶を失ったことにつけ込もうとする人物を登場させる」などサスペンスの要素も加えられる。 さらに「記憶を徐々に取り戻していく過程で、過去の自分を反省し、前向きに生き直そうとする」というヒューマン作としての魅力も十分。実際、『くるり』の主人公・まことは、「本当の自分と恋の相手を探す」だけでなく、会社を辞めて指輪職人の見習いとなるなど、自分の人生を歩み直しはじめている。 記憶喪失という設定を採り入れることによって、TBSの「火曜ドラマ」らしい定番のラブコメに、ミステリーやヒューマンの要素が加わったことがわかるのではないか。 一方、『アンメット』の主人公・ミヤビは、記憶障害によって脳外科医の仕事ができず看護助手を務めていたが、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)が現れたことで状況が一変。再び脳外科医として新たな一歩を踏み出す様子が描かれている。さらに、ミヤビが“思い出せない2年間”の中にいくつかの謎が隠されていた……というミステリーとしての魅力もたっぷり。原作漫画がある作品だが、記憶障害という設定がドラマ化の決め手の1つになったことは間違いなさそうだ。 『9ボーダー』は、「29歳の大庭七苗、39歳の成澤六月(木南晴夏)、19歳の大庭八海(畑芽育)の3姉妹がそれぞれの世代ならではの悩みを抱えながら、生きる道を模索していく」というコンセプトの作品。コウタロウの立ち位置は「主人公・七苗の人生を大きく動かしていくキーパーソン」であり、記憶喪失の設定で恋愛関係のみに終わらせず、物語に厚みを加えようとしている。