『帰ってきた あぶない刑事』公開記念 今の時代だからこそ映える"あぶ刑事"の魅力
バディモノではなくスリーマンセル
ひとつの事件を追いかけながら、時に単独行動をしながらも、最後には示し合わせたわけでもないのに、一緒になり悪漢に立ち向かうタカとユージの唯一無二のバディ感があぶ刑事の魅力のひとつ。 しかし、忘れてはならないのが、真山薫と町田透の存在だ。 タカとユージは、「打てるものなら打ってみろ」と言われたら、拳銃を打ってしまうあぶない刑事。いつも派手に暴れまわるので、たびたび、拳銃と警察手帳を取り上げられてしまう。そんなときに、ふたりをサポートするのが薫と透だ。 コスプレでいつも登場する薫には、「一生ついてきます!」とおだてにおだて、透には「女、紹介する」の一言で銃器を調達させたりする。普段は三枚目キャラの薫と透だが、タカとユージだけでは、どうにもできない肝心な場面には、必ず薫と透のどちらかが助けに入る。 彼らの重要性を考えると、あぶない刑事はバディではなく、実は三人組ではないだろうか。そのくらい、あぶない刑事はにとって彼らは重要な存在だ。 そんな透と薫も、初の海外ロケが行われた、2005年10月22日公開の『まだまだあぶない刑事』では、透が捜査課課長に、薫が少年課課長に昇進。くわえて新しい港署の伝説バディを目指すべく、佐藤隆太、窪塚俊介が、薫的ポジションに水川あさみが登場し、港署の世代交代を匂わせた。 2012年に発売されたDVDマガジン「あぶない刑事 全事件簿」の累計120万部突破を受け、2016年1月30日に『さらばあぶない刑事』が公開される。 タカとユージの定年退職までの5日間を描く本作では、タカの恋人役に菜々緒、ユージが更生させた元不良に吉沢亮が出演。国際的犯罪組織の悪役である吉川晃司のシンバルキックを交えたタカとの戦いは必見だ。
さらば、から8年 無茶しないと、滅びるぜ。
最新作では『さらば』で無事定年を迎えニュージーランドに移住していたタカとユージが横浜に帰ってくる。ふたりは探偵事務所、T&Y DETECTIVE AGENCY.を立ちあげる。そんな彼らのもとにハーレーに乗った美女・永峰彩夏(土屋太鳳)が、母親・夏子を探してほしいとやってくる。夏子はタカとユージがかつて愛した女性シンガーだった。タカとユージは、彩夏は自分の子供ではないかと?思いながら、3人で夏子を探す。 夏子捜索のなか、チャイニーズマフィアのリウ・フェイロン(岸谷五朗)、謎めいた美女ステラ・リー(吉瀬美智子)、そして、『もっとも あぶない刑事』でタカとユージが射殺した暴力団の銀星会会長、前尾源次郎(柄本明)の息子で、起業家の海堂巧が(早乙女太一)が横浜新カジノ構想を画策し、タカとユージがまたもや事件に巻き込まれていく。 土屋太鳳が、あぶ刑事を知らない世代へタカとユージの紹介役を務め、早乙女太一が、悪役らしくぶっとんだ狂気で物語のメリハリをつけている。このあぶ刑事チルドレンたちが、本作の魅力を高めている。 本作『帰ってきた あぶない刑事』は、今までのあぶ刑事劇場版で、おそらく一番分かりやすい。それでいて、TVドラマシリーズからつながるタカとユージの魅力、あぶ刑事の世界のいいところをぎゅっと詰め込み見事にパッケージングした成功例だと思う。本作スタッフのあぶ刑事を次の世代へという熱意が伝わってくる。 前作『さらば あぶない刑事』はタカとユージの定年退職直前の話だが、今回は、課長になった透が定年の年となる。透とはリアルに同い年(1965年生まれ58歳)の杉本哲太が同期の県警本部長役として出演し、タカとユージの行動を注視するように命じる。 キャロルの親衛隊を務めたクールスの元メンバー、舘ひろしの後輩に、横浜銀蠅の弟分、紅麗威甦(グリース)出身の杉本哲太、『ビー・バップ・ハイスクール』デビューの仲村トオル、彼らは横浜と不良つながり。このような配役とメタ表現もあぶ刑事の魅力のひとつだ。 そんな港署捜査課三代目課長・透の部下たちに、西野七瀬、鈴木康介、小越勇輝。彼らはかつての港署捜査課メンバー、ベンガルが演じた田中文男ことナカさん、山西道広が演じた吉井浩一ことパパのような立ち位置で、一見へっぽこ感のある役柄。ちなみに長谷部香苗演じる瞳ちゃんも現役だ。 そして、ロケ地としてお馴染みのバー「Star Dust」をはじめ、横浜ロイヤルパークホテル、山内埠頭、港の見える丘公園など、魅力ある横浜の街を再びタカとユージが駆け巡る。 個人的にぐっときたのが、「タカ!」「ユージ!」と、ただ名前を呼び合っているだけなのにかっこいい、あのコールアンドレスポンスを多用せず、ピンポイントで呼び合うところがいい。 もちろん、いくぜ!と挿入歌「RUNNING SHOT」が流れるとユージが走り出し、タカがバイクにまたがり、敵とショットガンで一騎討ちするショータイムもある。エンディングはジャンプして舘ひろしが歌う「翼を拡げて」が流れる。ファンが観たかったものをそのまま観せてくれるのが心憎い。 ここまでつらつらと書いてきたが、こんな予備知識がなくても、最新作は”もっとも”あぶ刑事を楽しめる。70代を迎えたタカとユージは、”まだまだ”ショットガンをぶっ放すし、横浜の街を全力疾走する。”さらば”といっても帰ってくる彼らは、爆発に巻き込まれても死なない”リターンズ”。次作があるかはわからないが、我々のあぶ刑事は”フォーエヴァ―”にかっこいい。
文 / 小倉靖史