マレーシアのウミガメが危機 温暖化でメスばかり孵化、卵を日陰へ移す活動も
マレーシアの人里離れたビーチで、砂の中に産み落とされたばかりのウミガメの卵をボランティアらが慎重に回収し、日陰の涼しい場所に移すという保護活動を行っている。研究者によると、ふ化するウミガメのオス・メスの比率は卵の時に経験する温度に大きく影響され、温暖化によりオスが減っている。28―30度だとバランスの良い性比を保てるが、ふ化温度が平均で30度を超えると100%メスに偏り、28度以下になるとオスに偏るため、産卵数に影響が出るという。 ここはマレーシア東部、ルダン島沖。このウミガメの夫婦からはもうすぐ卵が生まれる。だが保護活動家によると、地球温暖化によりウミガメの繁殖能力が危険にさらされる恐れがある。 ふ化するカメのオス・メスの比率は、卵の時に経験する温度に大きく影響され、温暖化でオスが減っているという。 性比のバランスを維持するため、チャガー・ハッタン・タートル自然保護区の科学者らは、巣を日陰に移すことでウミガメの未来を守っている。 夜の闇の中で産卵するメスのウミガメ。メスが海へ戻った後、ボランティアらが砂を慎重に掘り卵を回収。ふ化したばかりの卵を林に近い日陰に移動させるためだ。研究者らは子ガメを保育器に移し、捕食されないよう、夜間に放す。 マレーシアトレンガヌ大学のウミガメ研究者、トーレン氏は、性比のバランスを保つ最適な温度は数度という狭い範囲内にあると語る。 「基本的に、28―30度だとバランスの良い性比を保てる。ふ化温度が平均で30度を超えると100%メスに偏り、28度以下になるとオスに偏る」 マレーシア全土で数十年にわたり、ウミガメの個体数は大幅に減少。主因は卵の採取、乱獲、保護政策の不足などだ。 オサガメは、80年代後半に個体数が激減するまで、この地域の観光の目玉だった。 自然保護区の関係者は近年、オスの赤ちゃんの減少をすでに確認している。海水と地表の温度は引き続き上昇傾向にあり、今回のような取り組みをしないと上昇傾向が続く恐れがあるという。 「ウミガメの保護活動家らは、今後15―30年の間に制御不能な地球温暖化が起これば、世界中のウミガメの産卵個体群に悪影響が出ると心配している。メスのふ化が多くなり、産卵が減るからだ」 保護活動の成果はまだ調査段階。マレーシアのカメたちはいまも気温上昇にさらされている。 研究によると、ルダン島周辺の南シナ海の平均海面温度は、ここ数十年で30度近辺まで着実に上昇した。将来、ウミガメにとっての限界点を超える可能性があるという。