子連れ登校もOK、妊娠中退以外の道示すテキサスの女子校
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【1月4日 AFP】米テキサス州ブラウンズビル(Brownsville)に住むヤレジ・アルバラードさん(17)は、早起きして登校用の持ち物をバックパックにそろえる。1歳になる娘、カミラちゃん用の哺乳瓶も用意しなければならない。 「紙おむつとウエットティッシュ、ミルクを用意しないと。それと、大抵は服も。汚しちゃうから」と言う。 スクールバスにはチャイルドシートがあり、生徒らは子連れで登校している。リンカーンパーク高校(Lincoln Park High School)は、ヒスパニック系の低所得者層が住む地域にある女子校だ。 同校は、妊娠中または出産したばかりの14~22歳の生徒を受け入れている。授業中は校内にある託児室に子どもを預けることができ、必要に応じて、いつでも託児所で授乳もできる。 米連邦最高裁判所は2022年、女性の人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決」を覆す判断を下した。以来、保守的な州では中絶が禁じられてきた。テキサスもその一つだ。 同州では、未成年者が避妊薬を服用するには成人の許可が必要とされ、学校での性教育は義務付けられていない。 ■「妊娠は一つの状態にすぎない」 アルバラードさんは母親に協力してもらっている。しかし周囲には、妊娠が判明すると、通っていた学校で嫌がらせを受けるか、家族に追い出されて子どもの父親や親戚と暮らしている友人もいる。 米疾病対策センター(CDC)によると、2022年の15~19歳の出生率は前年比で3%減少し、1991年に比べる78%も低下した。しかしテキサス州の場合、NGO「ヘルシー・フューチャーズ・オブ・テキサス(Healthy Futures of Texas)」の2021年のデータでは、ヒスパニック系の若年層の出生率は白人の同年代の2.4倍となっている。 CDCは若年層の出生率の高さの要因として、医療を十分に受けられないことや教育水準の低さ、家庭の貧困などを挙げている。 シンシア・カルデナス(Cynthia Cardenas)校長は、「(妊娠している生徒たちには)妊娠は障害ではなく、一つの状態、9か月間の状態にすぎない、あなたには成功するチャンスがあると絶えず言って聞かせる必要がある」と話した。 同校の託児所には現在、定員の16人の乳児が預けられており、数人が空きを待っている。 創立は1990年代。こうした学校は全米でも数少ない。授業は英語で行われるが、数キロ先はメキシコ国境で、地元では大半の人が英語とスペイン語を話す。 出産して通学できない生徒に対しては、教師が自宅を訪れている。州から助成金が出ており、専門の看護師もいる。 NGO「チャイルド・トレンド(Child Trends)」によると、全米の女子高生の卒業率は90%だが、妊娠した場合は53%に低下する。 「この学校がなかったら、今うちにいる53人の生徒は中退していたかもしれない」とカルデナス校長は言う。 「宿題は出ない。学校で全部終わらせる。なので、娘と過ごす時間も多い」とアルバラードさんは語った。 教師も生徒に理解を示している。 理科教師の一人は、「子どもが寝付かなかった、体調を崩した」などの理由でぐったりしている生徒もたまにいると話した。「そんな時には『10分仮眠しなさい』と声を掛ける」という。 「普通の学校だったら、こういうことは分かってもらえない」と、ミラ・ルエバノさん(17)は話した。「この学校では、先生たちは偏見を持ったりしない。協力してくれて、話を聞こうとしてくれる。こちらの状況を理解してくれる」 ルエバノさんの夢は教師になることだ。同年代の子が妊娠すると、中退しないように説得している。 「諦めないでほしい。将来を考えるなら(中退すれば)後悔することになる」と話した。 映像は2023年11月に撮影。(c)AFPBB News