米津玄師、Mrs. GREEN APPLE、藤井 風、あいみょん……J-POPに“花”がモチーフの楽曲はなぜ多い?
いつの時代にも、“花”をテーマにした名曲が数々生まれてきた。直近では、米津玄師が11月18日にリリースした「Azalea」も、そのひとつとなるだろう。 【写真】優しいまなざしでこちらを見つめる米津玄師 「Azalea」はNetflixシリーズのドラマ『さよならのつづき』の主題歌である。曲中で〈残してった挿し木の花〉と歌われているように、アザレアは挿し木で増やすことができる花だ。挿し木で増やした株が親株と同じ遺伝子を持つことに作品のストーリーを重ね、このタイトルが付けられたという(※1)。 本作以外にも、米津には“花”にまつわる楽曲がいくつかある。たとえば、5thアルバム『STRAY SHEEP』に収録された「ひまわり」。〈その姿をいつだって 僕は追いかけていたんだ〉というフレーズは、ヒマワリが太陽のある方角を向いて咲くことや、「あなただけを見つめる」「憧れ」といった花言葉にも繋がる。ほかにも、「花に嵐」や「Paper Flower」などの楽曲がある。 “花”を題材にした楽曲を紐解いていくと、「Azalea」のように花の性質を踏まえた曲や、「ひまわり」のように花言葉との関連性が見られる曲もあれば、美しく咲いたのちに枯れてゆく花を“人生”に喩えた曲もある。たとえば、藤井 風の「花」や「ガーデン」が当てはまるだろう。特に「花」は〈枯れていく/今この瞬間も/咲いている/全ては溶けていく〉と始まり、冒頭から生と死を感じさせる。 また、同曲では〈わたしは何になろうか/どんな色がいいかな〉とも歌われ、一つひとつ色や形が異なる花が、人の個性やそれぞれの生き方に重ねられている。こうした人への形容のしやすさも、“花”にまつわる楽曲が多く誕生することに繋がっているのかもしれない。
Mrs. GREEN APPLE、あいみょんが“花”に込めた想い
花の名をタイトルにした今年のヒット曲といえば、思い浮かぶのがMrs. GREEN APPLEの「ライラック」だ。ライラックにはピンクや白の花もあるが、なかでも紫色がよく知られている。曲中では〈青に似た/すっぱい春とライラック〉〈あの頃の青を/覚えていようぜ〉と歌っているように、青よりも渋みが加わった色であることから、年齢を重ねても残っている“青春”の要素を表しているという(※2)。 また、「花が咲く」という言葉が“成功”や“繁栄”などを意味するように、花は何かが実ることの比喩としても用いられる。「ライラック」も、過去の痛みも受け止めて今を生きていくというメッセージ性が、花のポジティブなイメージと重なるように思う。苦しみに負けずに“たくましく咲く”という意味では、彼らの「WaLL FloWeR」や「ノニサクウタ」などの楽曲にも通じるものがあるだろう。 あいみょんの「愛の花」も、〈涙は明日の為/新しい花の種〉のフレーズからは未来への希望が感じ取れる。彼女も花をテーマにした楽曲がいくつかあり、1組のアーティストと1,000人の18歳世代が共演して1回限りのステージを創り上げる『18祭』(NHK総合)のテーマソングである「双葉」もそのひとつ。コロナ禍を耐えながら勇気を持って企画に応募した18歳世代を、土から這い上がって、いちばん最初に開いた芽(双葉)に喩え、元気付けている。 そして、花をタイトルにした彼女のヒット曲といえば、「マリーゴールド」だ。〈麦わらの帽子の君が〉〈あれは空がまだ青い夏のこと〉という歌詞もあるが、マリーゴールドが初夏から秋にかけて見頃を迎える花であることからも、この曲が夏の歌だと読み取れる。花は種類によって咲くタイミングが異なるからこそ、特定の季節を思い起こす役割も果たすのだ。 性質、花言葉など豊富な切り口があり、美しさ、たくましさ、儚さなど、イメージも多種多様な“花”。よって、さまざまなメッセージを乗せやすいからこそ、“花”をテーマにした楽曲は数多く生まれるのではないだろうか。今後もどんな名曲が世に咲き誇るのか楽しみにしたい。 ※1:https://natalie.mu/music/pp/yonezukenshi29/page/3 ※2:https://www.billboard-japan.com/special/detail/4296
かなざわまゆ