「人殺し政権」がロシアを支配と批判の政治犯、懲役25年で獄中死の恐れも
ロシアの政治犯ウラジーミル・カラムルザが拘束されてから今月で2年、懲役25年の実刑判決が下されてから1年が経過した。カラムルザは英国籍を持つロシアの野党政治家で、ジャーナリストや作家、映画監督としても活躍し、ロシア反戦委員会の共同設立者でもある。昨年4月17日、自国政府とウクライナ侵攻を批判したとして、懲役25年の判決を受けた。ロシア大統領府(クレムリン)が反体制派に対する容赦ない弾圧を強化する中、カラムルザに下された刑は、ウラジーミル・プーチン大統領の政敵に下された刑としては過去最長となる。 プーチン政権は、国民や政敵への弾圧を徐々に強めている。ロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、こうした政治弾圧は一層強まっている。侵攻に関するあらゆる情報を封じ込め、ロシア政府が「特別軍事作戦」と呼ぶ偽情報の泡の中に自国民を閉じ込めておくためだ。ロシアの人権団体メモリアルによると、現在ロシアには600人以上の政治犯がいるという。実際の数はそれより多く、1000人を超えるのではないかと指摘する団体もある。 ロシア政府は長年、カラムルザを脅威と見なしてきた。カラムルザは野党指導者の故ボリス・ネムツォフ元第一副首相の側近で、人民自由党の副党首として議会選挙にも立候補していた。2015年にネムツォフが暗殺されると、カラムルザは米首都ワシントンとリトアニア首都ビリニュスの街路をネムツォフに関連する名前に改称するよう働き掛け、成功した。 こうした活動を理由に、カラムルザは2015年と17年の2度にわたり、ロシアの工作員による毒殺未遂事件の被害者となった。それにより、末梢神経に支障をきたし、動いたり感じたりする能力の低下を引き起こす多発性神経炎を発症した。
国家や国際社会は政治犯を支援しなくてはならない
2022年2月のウクライナ侵攻開始後にロシアに帰国したカラムルザは、新たに設けられた検閲法を無視して公に侵攻を非難した少数の野党政治家の1人だった。カラムルザの容疑は、米アリゾナ州下院で同年3月15日、ロシア軍がウクライナの住宅地でクラスター爆弾を使用し、産科病院や学校を爆撃しているとして、自国の軍事行動を非難する演説を行ったことに起因する。カラムルザは同年4月、米CNNのインタビューで、「人殺し政権」がロシアを支配していると批判。これが放映された数時間後に逮捕された。カラムルザは国家反逆罪やウクライナ侵攻を巡る偽情報の流布などの罪で起訴された。 ロシア当局は昨年9月、カラムルザをシベリアの極秘刑務所に移送した。弁護団によると、カラムルザは刑務所に到着するとすぐに独房に入れられ、自身の子どもたちとの面会も拒否されている。カラムルザの病状を考えると、こうした環境で生き延びることができるのか、深刻な懸念がある。弁護団は、医師の治療が必要な健康状態であることを理由に釈放を求めているが、裁判所はこの要求を却下している。服役を開始して以来、多発性神経炎の症状は悪化の一途をたどり、足と片腕の感覚を失い、体重も30キロ減った。 妻のエブゲニア・カラムルザは、釈放に向けた動きがなければ、夫が獄中で死亡するのではないかと気を揉んでいる。同国の野党指導者アレクセイ・ナワリヌイが獄中で死亡してからは特に、その可能性を懸念する人たちが増えている。カラムルザは緊急の支援を必要としている。医療面や法律面だけでなく、刑務所から出所するための助けが必要なのだ。 カラムルザは英国籍を持つにもかかわらず、英政府から必要な支援を受けていない。囚人交換には関与しないという英国の時代遅れの政策により、英政府はカラムルザの釈放につながる交渉は行っていない。政策が時代遅れで欠陥があるのなら、変えていく必要がある。カラムルザのような政治犯が真実や民主主義、人権を求めて立ち上がるのと同じように、国家や国際社会はこうした政治犯を支援しなくてはならない。
Dr. Ewelina U. Ochab