今、ニュースに一番求められている「ソフトM」 連日連日「インバウンド観光客の動向」…チクチクといじめられたい気分
【テレビ用語の基礎知識】 ここのところ、ニュースやワイドショーでは、外国人観光客、つまりインバウンドの話ばかりですね。やれ、インバウンドが増えすぎて京都の交通がまひしただの、1万円近い海鮮丼のような高いグルメを食いまくって日本人は指をくわえて見ているだけだの、揚げ句の果てには「インバウンドが富士山を撮影しようとして迷惑行為をしまくる」ので、黒い幕を張って富士山が見えないようにしてしまう地方自治体があるだの、とにかくみなさん「お金持ちのインバウンドと貧乏な日本人」の話が大好きです。 逆に日本人は「お金がないので、海外旅行に米だの水だの食料を大量に持参し、節約しながらチマチマ楽しんでいる」との報道もずいぶんされました。とにかく異常なくらいの円安と物価高なので、どうにもつらいですもんね。 それにしても、なんでこんなにインバウンドが気になるんだろう? と思いました。とにかく外国人観光客に来てもらわないと日本経済は回りませんから、「外国人は日本に来るな」とか心底思っている人はほとんどいないはず。なのに連日連日「インバウンド観光客の動向」をニュースで放送して、わざわざ自虐的な気持ちになる必要もないのでは…と考えてハッと気がつきました。 みんな「ちょっと自虐的」になりたいのではないだろうか? と思うんです。言ってみれば、今、ニュースに一番求められているのは「ソフトM」とでもいうのでしょうか。「日本がいかに世界の中でちょっとダメなのか」「いかに落ちぶれてしまったのか」と言うことで、「チクチクといじめられたい気分」なのではないでしょうか。 いや、あくまで「チクチク」くらいがいいんだと思います。これが「日本全否定」みたいな話だと感じが悪いし、受け入れられない。バチーンとビンタされるような、激しく張り倒される「全面自虐」はあくまでイヤ。せいぜい「つねられる」くらいの「ソフトないじめられ方」で、「そうだよね、日本はダメになっちゃったよね」「いまや中国や韓国だけじゃなく東南アジア諸国にも負けちゃってるもんね、ハハハハハ」くらいでユルく「引かれ者の小唄」を楽しみたい、そんな世相なのでしょう。 気持ちはわかるんですが、なんだかこれでは先に進まないような気もしますね。じゃあどうするか? というと難しい気もしますが、ともかく、しばらくはテレビニュースに「ソフトM&ソフト自虐」コンテンツがあふれ続けそうな予感がします。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。
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