『不適切にもほどがある!』6話を考察。一段と純子(河合優実)がかわいい
娘・純子(河合優実)が若くして亡くなることを知ってしまった父・小川市郎(阿部サダヲ)。父娘の愛情が伝わってくる『不適切にもほどがある!』(TBS金曜夜10時~)6話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
回が進むごとに募る純子への愛おしさ
そう遠くない未来に終わりが来ると知っているからか。いや、そうでなくても、このドラマの最初の頃から彼女は魅力的だった。けれど、ここに来てまた一段と純子(河合優実)がかわいい。 自分と娘・純子が9年後に阪神・淡路大震災で亡くなってしまうことを知った小川市郎(阿部サダヲ)。娘に会ったら顔に出てしまう、となかなか令和から昭和に帰ろうとしない。 タイムスリップなんかしなければ、自分と娘が早く死んでしまうことを知らずに済んだ。けれど市郎は、 「死ぬのがマイナスなんじゃなくて、むしろ大人になった渚っちにこうして会えたことがプラスなんだ」 と、本来であれば幼いうちに別れたはずの自分の孫・犬島渚(仲里依紗)と会えたことをポジティブに解釈し、昭和に帰る決意をする。 サカエ(吉田羊)のスマホをこっそり持ち出して電話をかけるほど父の帰りを気にしていた純子。けれど実際に市郎が帰ってきたときは、なんでもなさげに会話する。でもその奥に嬉しさがにじみ出ている、その表情がなんともいい。新しいスーツを自慢する父に「いいんじゃない?」とぶっきらぼうに言いながらほほえむ純子。父に抱きしめられて「うん」とだけ言う純子。その姿がかわいくて、愛おしい。
不適切な言葉に感じる切なさ
「どうなるかわかってる人生なんて、やる意味あんのかクソッ」 自分と娘の将来を話し、やるせなさをにじませる市郎に対して、サカエは言う。 「その時になったら考えるってことじゃないかな。今考えてもその時考えてもたいして変わらないなら、今は日々を楽しく、好きなように生きたらどうだろう」 その言葉を受けた市郎は、1話冒頭をなぞるように純子を起こす。「起きろブス」「チビゴリラ」「メスゴリラ」なんていかにも「不適切」な言葉が飛び交っているのに、その単語自体はもう気にならない。ただただ見ていて切なさばかりが募る。1話と6話、同じようなシーンが、こんなにも違って見える。 市郎は純子を令和の世界に連れて行き、渚や純子の将来の夫・ゆずる(古田新太)に会わせる。渚に連れられ、市郎が出演するクイズ番組を見学していた純子は、若者チームが市郎をバカにするのを見て、収録に割って入る。 「うちのオヤジを小バカにしていいのはな、娘の私だけなんだよ!」 ストレートに表現されないながらも、そこには父娘の愛情が確かにある。市郎は「17歳だから真剣に受け止めてしまうのだ」と娘をなだめ、そこから6話のサブタイトル「昔話しちゃダメですか?」につながってゆく。「おじさん、おばさんが昔話してるのは17歳に戻りたいから」と歌い上げる市郎たち。「なるほどね、思い当たるところあるなあ」なんてミュージカルシーンを楽しんでいると、歌が終わって純子のセリフがやってくる。 「今見てるこの景色、これが昔話になるんだよね」 彼女はわずか26歳で死んでしまうのだ。昔話を懐かしむような将来は来ない。にぎやかな時間の直後に急に悲しみと切なさが襲ってくるこの落差! 何も知らない17歳とはいえ、幼い頃に死別した母親である純子から「かっこいいね、バリバリ働いて。尊敬しちゃう」と言われて胸をつまらせる様子の渚もよかった。