「地元のお米を食べよう」消費拡大、文化継承へ独自条例広がる
米の消費拡大や米文化の継承を目的に、自治体が独自の条例を制定する動きが広がっている。4月で「お米を食べよう条例」の制定から1年となった茨城県つくばみらい市は、地産地消に成果を上げている。同市産米を取り扱う飲食店の登録が3倍に増え、市内の公立幼稚園・保育所や小・中学校の学校給食で使う米は、ほぼ100%が同市産になった。 【画像】 市産米の消費拡大アイデアを出し合うつくばみらい市職員 自治体の条例で米に関連した内容は、これまでは食育を主眼に、朝食の摂取を促す「朝ごはん条例」の中で位置付けるケースが多かった。近年は米に特化した条例も相次ぎ、条例に基づいた取り組みが進んでいる。福島県郡山市は毎月8日を「こおりやま『お米の日』」として情報発信。千葉県木更津市は、学校給食で有機栽培米の導入に力を入れる。 つくばみらい市は、2023年産主食用米の作付面積が全国4位の県内でも有数の米産地。古くから「谷原三万石」と呼ばれ、直近の作付面積は1800ヘクタールを超える。こうした背景を踏まえ、23年4月に条例を制定。市産業経済課は「制定を機に市民へ周知し、市産米の消費拡大を加速させたい」と話す。 市は市産米が「どこで食べられるのか」「どこで買えるのか」の情報発信に注力。23年3月に市産米に特化したインスタグラムを開設し、パックご飯の販売にも乗り出した。 市産米を提供する飲食店が一目で分かるように、のぼり旗や店内広告(POP)を製作。申請があれば無償提供し、登録店舗は条例制定時から3倍増の約30店舗に拡大した。市民参加型の企画も相次いで開催。おにぎりレシピの募集には約30件、米の魅力を伝えるフォトコンテストには約50件の応募があった。 購入できる店舗・場所の情報発信にも力を入れる。JA茨城みなみ農産物直売所「みらいっ娘」や毎月開かれる朝市などをインスタグラムや市のホームページで紹介するが、現在は10カ所に満たないのが課題だ。市は直売に前向きな米農家に声をかけ、品種や配達方法を調査。リスト化し、公開を目指す。 05年の「つくばエクスプレス」の開業を機に宅地開発が進む同市。人口は1万人以上増え、5万人を超えた。市産業経済課は「市産米を食べてもらえるチャンス。生産者の思いと消費者のニーズを結ぶ施策を展開したい」と意気込む。(志水隆治)
日本農業新聞