中国のスパイドローンが「護衛艦いずも」を撮影? SNSで拡散する動画に専門家は「飛行甲板に注目すべき」
飛行甲板の違和感
ところが今回の動画は中国で話題になり、その反響を知った日本の民放キー局などがニュースで伝えた。要するに報道が先行したのだ。 「本当にドローンが護衛艦の上を飛んだのなら、日本発のニュースになったのではないでしょうか。中国発のニュースという時点で、ドローンの飛行を疑う根拠になるはずです。誰かがフェイク動画を作成し、それを中国の動画サービスにアップしたからこそ、先に中国で話題になった。そして、それを日本のメディアが気づき、防衛省に取材申請するなどして記事を配信したわけです」(同・軍事ジャーナリスト) ネット上では旗が風にはためく方向や、艦番号のペイントのかすれ具合、はたまた周辺の建築物の様子など、動画の非常に細かな点までが議論の対象となり、本物説とニセモノ説が拮抗している。 「私が注目したいのは飛行甲板です。実際の甲板は、もう少し汚れています。動画の甲板は耐熱塗装処理後の雰囲気が感じられず、F35B離発着用の黄色の滑走路標示線も、ちょっと綺麗すぎるのではないでしょうか。甲板に乗組員の姿が全く映っていないのも疑問です。もし本当にドローンが撮影したのであれば、少なくとも1人か2人の乗組員がドローンに気づく様子が納められたはずです」(同・軍事ジャーナリスト)
中国メディアのほうが上
日本のネット上では、動画に「中国のスパイが撮影した」との説明文が書かれている投稿も目立つ。なぜスパイが撮影した極秘動画がネット上に流出したのかは謎だが、意外に信じている人も多そうだ。 「海上自衛隊横須賀基地は、陸地側が小高い丘になっています。もしスパイが本気でいずもを撮影したいのなら、わざわざドローンを飛ばして航空法に違反するリスクを冒す必要はありません。横須賀には撮影に最適の場所が、いくつもあります。港を見下ろせる絶好の場所にビデオカメラを設置すれば任務完了でしょう。アメリカ海軍の横須賀基地も同じ方法で撮影が可能で、こうした場所は売り地になっているところも珍しくありません。『敵国のスパイが土地を買って家を建てれば、海上自衛隊とアメリカ第七艦隊の動向は筒抜けになる』と週刊新潮が記事で警鐘を鳴らしたこともあります」(同・軍事ジャーナリスト) 中国のスパイがいずもに潜入し、内部の様子を動画に収めるのは、かなり難易度の高い“ミッション・インポッシブル”だろう。だが中国のメディアは、いずもの内部動画をすでに“入手”しているのだという。 「海上自衛隊と言わず、自衛隊は海外メディアの取材にも協力的です、現場で新華社の記者やカメラマンが、日本のメディアと横並びで取材する光景は珍しくありません。もちろん公開可能な場所限定ですが、護衛艦内部の撮影も許可しています。ちなみに中国海軍は海外メディアの取材に対しては非協力的ですから、日本のメディアで中国海軍艦艇の独自映像を持っているメディアはありません」(同・軍事ジャーナリスト)