茂木健一郎「抑圧しようとすれば、するほど暴れるのです」“脳の記憶”について脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 12月7日(土)の配信では「リラックス中の思考」に関する質問に答えました。
<リスナーからの質問>
茂木さんに質問です。お風呂に入っているとき、仕事のことを考えるのをやめられますか? 入浴中に仕事の反省や課題を考えてしまいます。せっかくリラックスしているので、趣味のことや日常で楽しかったことなどを考えたいです。
<茂木の回答>
茂木:お気持ちはわかるのですが、決して悪いことではありません。 といいますのも、入浴中にお仕事のことを集中して考えていると思うのです。たとえば、将棋の棋士の方も、リラックスしているときに反省や課題を考えるそうです。我々の印象としては、リラックスしたいのに仕事のことを考えていると、リラックスできないと考えがちじゃないですか。これはネガティブシンキングです。 それに対して、ポジティブシンキングではどう考えるのかお伝えします。自分にストレスを与えるかもしれないことを解きほぐして、リラックスに向かっていく。それは、いわば、飛行機が滑走路に降りて行くような形で準備を進めているのです。そう考えると、決して悪いことではないのです。 気になっていることを考えるのは、脳にとって自然なことです。お風呂のなかでリラックスしているときにお仕事のことを考えると、普段だと気付けないことに気付いたりすることってありますよね。 これを「メタ認知」(※自分の認知活動を客観的にとらえること)と言いますが、自分が課題だと思っていたことが、ふっと解決できたりします。そういう風にポジティブに考えることもできます。 仕事のことを考えるのはリラックスへの準備運動なので、そこから本格的に楽しかったことや、趣味のことなどをお考えになられたらいいのかなと思います。 また、過去だけではなく、これからのことを考えるのもポジティブ脳的には良いかもしれません。「お風呂から出たらこれをやろう」といった、時間的にこれから起こることを考えると、さらに前向きになっていけると思います。 脳は、たとえ考えたくなくても、無意識のうちに考えてしまうものです。脳の記憶は面白いもので、抑圧しようとすればするほど暴れるのです。 相談者さんのお気持ちはわかりますが、「また仕事のことを考えている」と自分にダメ出ししてしまうことのほうが、むしろネガティブ脳になってしまいます。ポジティブ脳的には、そういった自分を含めて受け入れます。そうなってくると、気持ち的に楽になるかもしれません。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」2024年12月7日(土)配信より)