フリープロデューサー残間里江子さん「人を差別するのが最も醜い」 放送10年目を迎えたBS-TBS「Together~だれにも言えないこと~」
さまざまな分野で活動するフリープロデューサーの残間里江子さん(74)が司会を務めるBS-TBS「Together~だれにも言えないこと~」(毎月第1土曜午後11時)が2015年4月の放送開始から10年目を迎えた。「夜のお悩み相談室」としてさまざまな悩みに向き合い、一緒に司会を務める社会学者・古市憲寿さん(39)、ゲスト相談員と相談者に解決への道標となる「グッドアンサー」を届けてきた。本紙の取材に応じた残間さんは実感を込めて「この10年で悩みも多様化してきました」と語る。誰もが抱える悩み。時代を反映するその実情を聞いた。(三橋正明)
番組放送はこれまでに111回を重ね、残間さんは「悩みの特徴は家族と言っても母親と娘の関係だったり、夫婦の離婚をめぐる相談も理由はさまざま」と多様化を遂げているとし、「離婚は性格の不一致より、女性が働くことで経済感覚の不一致が色濃くなっている。どこに夫婦の価値観を求めるか、不一致はライフスタイルの違いなんです」。その上で「女性が相対的に強くなってきた」と印象を明かし、「(相談者の中には)妻に対して『申し訳ない』という夫もいます」とも。 ジェンダーをめぐる相談もある。「ゲイであることを悩んでいるのでなく、(ゲイとしての)恋愛や人間関係の悩みです」と性的少数者(LGBT)の抱える悩みの変化も感じるという。 夫婦関係では「不倫」の相談もあるが、変わったのは「不倫をしている女性からの相談」という。「いっぱい不倫しても夫をだまし通そうという相談で本人は悪いと思っていない」と話し、「(不倫といえば)昔は男がやっていたことを妻も同じようにやっているだけで罪悪感はないんです」と受け止める。 番組に出演する多様な相談者に真摯(しんし)に向き合う残間さんは「私は人を差別するのが人間の中で最も醜いことと思っています。年齢、性別、仕事、専業主婦でも兼業でもそれぞれに光と影はあるでしょうが、常に平等に見たい」と一貫した姿勢を強調する。 番組では相談者から残間さんらが相談内容を聞き取り、質問を重ね、相談員と協議の上、グッドアンサーを導き出す。その協議部分は相談者には隠されるが、相談者の立場を考え、突き放すことなく優しさがあふれる意見が交わされるのも特徴だ。視聴者にとってもバリエーションのある悩みは現代の〝ある側面〟を考えるきっかけになりそうだ。 残間さんは長くコンビを組む古市さんを「(ほかの番組では)強い人には皮肉を言っていますけど、相談に対しては常に弱い人の立場で考える人。相談を受ける中で死角になっている部分にスーッと入れる人」と評し、全幅の信頼を寄せている。 多数寄せられる相談はデリケートなものも多く、番組スタッフが20~30件に絞り、取材をした上で出演者を選ぶ。だが、出演直前に断る人もいるという。 残間さんは「悩んでいる人は『ダメだ』と自分で自分をいじめていることが多い。でも冷静に他人と比較すれば、相当恵まれた人もいる。上っ面だけで自分の欲望と闘っているんです」と分析。番組に相談するのは「自分の心の悩みを打ち明けられる人が周囲にいないからでは」と推察、「SNSの友達に内面をさらけ出せば、面白がられて拡散されたり、今は付き合いが広いといっても、悩みを相談する親友のような深い付き合いがないんでしょうね」。 番組で相談者の声を聞き続ける残間さんは「浮世に生きているので悩みはある。中にはお金で解決できるものもあるでしょうけど、(この10年で)世の中が窮屈になって、生きづらくなってきていると感じます」と打ち明けた上で「相談者の言葉を大切にこれからも(番組の)交通整理にあたっていきたい」と語った。 ◆残間里江子(ざんま・りえこ) 1950年3月21日生まれ、宮城県出身。アナウンサー、雑誌記者、編集者を経て80年に企画制作会社を設立。山口百恵さん著「蒼い時」の出版をはじめ映像、文化イベントなどを多数企画・開催。2005年「愛・地球博」誘致総合プロデューサー、07年「ユニバーサル技能五輪国際大会」総合プロデューサーを務める。行政機関の委員を数多く歴任する一方、09年に新しい「日本の大人像」創造を目指す「クラブ・ウィルビー」を設立。近著は「もう一度 花咲かせよう」(中公新書ラクレ)。文化放送「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」(土曜午前6時25分)など多数出演中。
中日スポーツ