2025年 話題のミュージカル公演をピックアップ
海外クリエイターとの合作も目立つ日本オリジナルミュージカル
日本オリジナルミュージカルに目を向けると、2025年は海外クリエイターとの合作が花盛り。松下洸平と松下優也がW主演する『ケイン&アベル』(1月)と、平野啓一郎の読売文学賞受賞小説が原作の『ある男』(8月)ではそれぞれ、ブロードウェイでも活躍するフランク・ワイルドホーンとジェイソン・ハウランドが音楽を書き下ろす。前田公輝主演の『ミセン』(1月)はドラマ化もされた韓国の漫画が原作で、ミュージカル版の脚本・音楽・演出も韓国のクリエイターが手掛けるが、ここ日本が初演の地。そして海宝直人主演の『イリュージョニスト』(3月)では、コロナ禍の影響で2021年はコンサート版での上演となった作品のフルバージョンに、英国の演出家トム・サザーランドが満を持して挑む。 日本のクリエイターによるオリジナル作品では、ドラマ化もされた人気漫画を小池修一郎が脚本・演出する『昭和元禄落語心中』(2月)が最大の話題作。ミュージカルのみならず映像でも目覚ましい活躍を見せる山崎育三郎、明日海りお、古川雄大が顔を揃え、戦前から平成の落語界に渦巻く愛と業を描き出す。また『えんとつ町のプペル』(8月)は、原作者の西野亮廣本人が演出した2021年公演に主演した吉原光夫を演出に、新たに廣瀬友祐を主演に迎え、フルオーケストラ版にバージョンアップしての上演だ。 2025年はまた、2016年の初演以来4度目を数える藤田俊太郎演出の『手紙』(3月)、新演出で上演される音楽座ミュージカルの定番『リトルプリンス』(5月)、原作漫画の人気を背景にウエストエンドと韓国への輸出も成し遂げた『四月は君の嘘』(8月)、同じく漫画原作で初演から2年という短いスパンでの再演となる『SPY×FAMILY』(プレビュー9月、本公演10月)と、オリジナルミュージカルの再演が多いのも特徴と言えそう。日本ミュージカル界でオリジナル作品が増える大きな契機となったコロナ禍の始まりから早5年、オリジナル作品の存在感がそろそろ海外作品と肩を並べる時期なのかもしれない。 文:町田麻子