くすぶる日銀タカ派姿勢への思惑、銀行・バリュー株買いを後押しか
(ブルームバーグ): マイナス金利政策の終了とともに、いったん勢いが衰えるかに見えた銀行株を含むバリュー(割安)株。だが、外国為替市場で円安が止まらず、市場では日本銀行が再度の金融引き締めに向けたタカ派的な姿勢を強めるのでないかとの見方がくすぶり、再びバリュー株への追い風が吹く可能性が出てきた。
円相場が対ドルで34年ぶりの安値を更新し、円安による国内経済への悪影響を懸念する声が経済界でも日増しに高まっており、植田和男総裁が早ければ今回の会合で再利上げに向けた布石を打つのではないかとの観測が浮上している。市場参加者の金融政策見通しを映すオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は10月までの0.25%への利上げ実施を織り込み、7月までの可能性も5割程度織り込まれきた。
住友生命バランスファンド運用部の村田正行部長は「植田総裁は円安が物価に与える影響を考慮するだろう」と予想。今回の会合で利上げは考えられないが、「利上げをにおわせるスタンスを打ち出す可能性がある」と述べ、こうした思惑が最近の銀行株の堅調につながっていると指摘した。
日銀の年内利上げ予想が8割占める、最多10月は4割に増加-サーベイ
3月のマイナス金利解除に際し、日銀は当面緩和的な金融環境が継続すると強調。市場も追加利上げは当分ないとみて、銀行株を含むバリュー株相場は終わるのではないかとの見方も出ていた。
UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、多くの投資家はマイナス金利の終了で日銀の政策変更はひとまず終わりと考えてきたが、日銀がいずれ利上げに動く大きな方向性は変わらないと指摘。こうした点が市場で見過ごされており、「銀行は過去数十年にわたり放置されてきたセクターだけに、日本が本当にインフレになるのなら新たなフェーズだろう」と語る。
円相場が節目の1ドル=155円を突破し、短期的には政府・日銀がいつ円買い介入を行うかどうかに注目が集まるが、中長期的には介入による円の押し上げ効果は限定的とみる向きが多い。円安進行の最大の要因は日本と海外の絶対的な金利差にあるだけに、円安阻止に向けた圧力は植田日銀にも大きくのしかかる。