「バスケW杯を100回以上見た」ドキュメンタリー監督が語る、勝因と五輪への期待「トムさんがやっぱり凄かった」
ナレーションの広瀬すずを絶賛「やっぱり、俳優さんは違うなと」
選手インタビューでは、なるべく初出のエピソードにもこだわった。「みんながチームファーストだった」という言葉も印象に残っている。 「トムさんも、『12人にわがままな選手が1人もいない』とおっしゃっていた。選手も同じ。チームの中の役割はそれぞれ違う。自分の役割は12人がそれぞれ持っている中で、劇的な大逆転劇で得点という目に見える形で貢献した比江島さん、河村さん、富永(啓生)さんがフォーカスされがちですが、それだけではない。監督業は裏方でもあるので、活躍を下支えした選手たちの思いも描いたつもりです」 選手たち、コーチは逆境の中に陥った時でも、自分たちの勝利を誰一人疑っていなかったそうで、「『12人全員が僕たちのゲームプランだったら、逆転できる』と同じことを言うんです。これだけ思いが一緒だから、あの結果につながったんだなと思いました。こんなふうに、人と同じ目標を持って信じられるものかとびっくりしました。それにはトムさんがやっぱりすごかったんだと思います」。 ナレーションは、バスケW杯テレビ朝日スペシャルブースターとして盛り上げたバスケファンの広瀬すずがナレーションを担当している。 「会場での盛り上がりを体験されていたので、ぜひと思っていたのですが、『今回は広瀬さんが主役ではないので、選手たちが引き立つナレーションにしてください』とお願いして、試行錯誤しながら読み合わせしました。とてもなじんでいて、広瀬さんだと気づかない人もいるかもしれない。やっぱり、俳優さんは違うなと思いました」 いよいよパリ五輪も近づいている。予選ラウンドは日本時間7月27日午後8時30分、ドイツ戦(世界ランク3位)、30日深夜0時15分、フランス戦(同9位)、8月2日午後6時、OQTラトビア大会勝者(ラトビア、ブラジル、モンテネグロ、ジョージア、フィリピン、カメルーン)戦となる。 「ドイツとは再戦です。選手のみなさんは後半(第3クオーター日本16-16ドイツ、第4クオーター日本16-12ドイツ)で上回ったことが自信になった、と言っています。これがその後の結果にもつながっていたと思うので、後半のようなゲームを40分間できたら、初戦の勝利も見えてくるのではないかと思います。それができるよう合宿していくと思うんです。また歴史を塗り替えていくんじゃないかなと期待しかないです」と勝利を信じている。 □大西雄一(おおにし・ゆういち)1977年1月29日生まれ。大阪府出身。大学卒業後に制作会社に就職し、主にドキュメンタリーのディレクターを務める。取材対象は政治家、歌手、作家、会社経営者、モータースポーツドライバー、歴史人口学者、科学者、医師、社会起業家、映画監督、サッカー選手、ピアニストなどジャンルレス。現在は自身の会社「One Mile」を立ち上げ、フリーランスとして活躍。主な作品は『ぜんぶ見せます!激闘2020MLB』(2020年・NHK)、『WRC 世界ラリー選手権』(2021年・NHK)、詰め込み教育の反動から変わりゆく中国教育のリアルをえがいた『中国の小学校でいま何が?』(2018年・NHK)、『コロナ危機 未来の選択/エマニュエル・トッド~ グローバリゼーションを超えて』(2020年・NHK)、『ザ・ヒューマン テロリストも一人の若者である~国際NGO代表 永井陽右~』(2022年・NHK)、『デジタル・アイ 北朝鮮 独裁国家の隠された“リアル”』(2023年・NHK)など。
平辻哲也