『フリースタイル日本統一』#18ーー拾われた組の闘いに 新たに見つけた“背負うもの”
2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームから好きなラッパー1名を吸収し、最終的に日本統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈られる。 【写真】大将・NAIKA MCと対戦する輪入道 軍牌が上がったのは……? 以下より、2月20日に公開された【#18】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。 ・NAIKA MC、人柄では勝利した外せない一戦「もう一本あるんでしたっけ?」 前回の【#17】に引き続き、TEAM神奈川(FORK×句潤×SANTAWORLDVIEW×輪入道×崇勲)とTEAM北関東(DOTAMA×NAIKA MC×Yella goat×MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻×Sitissy luvit)が、準決勝(五十万石の戦い)で対戦中。戦況は序盤から変わらず、TEAM神奈川が優勢なまま。TEAM北関東は残すところ、あとひとり。大将・NAIKA MCが背水の陣で、番組2度目の登場を迎える。 対戦相手は、輪入道。ビートは、東京弐拾伍時「東京弐拾伍時」。NAIKA MCが先攻で、譲れない一戦の狼煙が上がった。 NAIKA MC:日本統一にはもってこいのキャラクターじゃねぇかよ なぁ 千葉のチンピラ お前も成り下がったってな あの組に入れてもらったんだろ 輪入道:どぶさらいもやったし 下積みもやった 今さら何言ってやがる チンピラから成り上がった いつまで経っても変わらねぇ 形だけのディス通じゃねえんだ こっちは叩き上げだよ NAIKA MC:叩き上げは北関東だよ このマイクは飾りじゃねぇんだよ 当たり負けするわけねぇだろうが/DOTAMAの眼鏡がキラりと光った瞬間 NAIKA MCの頭もピカりと光るんだよ 輪入道:そんなに分かってんだったら 今更なディスしてんじゃねぇよ 地元の後輩に同じ事言えんのか? NAIKA MC:地元の若手に胸張れるぜ 胸を張るんだよ 北関東はよ 見栄じゃねぇぜ 胸とあと背中だ 馬鹿野郎 叩き上げの戦いだよ お前に負ける気なんかこれっぽっちもねぇよ 輪入道:叩き合った後にはいつも握手するよりも 街と街の間の隠す事も出来ない 俺たちのパッション 1バース目から、受けては返しの速い展開が続く。NAIKA MCがまず〈千葉のチンピラ〉と誘うと、輪入道が“成り上がり”や“叩き上げ”の話題を持ちかけるが、NAIKA MCも2バース目で真っ先にそれを翻す。3バース目でも、“地元の後輩に~”というフリースタイルバトルである種、常套句となっている攻め文句を突きつけられるも、見栄でなく胸を張り、ついでに背中も見せるなど、“+α”の返しをできている印象だった。 両者とも、相手の言葉の重箱の隅を突くように細かな部分を拾い、自身の拳銃の弾としていく感覚。大きな隙を見せれば、すぐさまバトルの決着がつくという、バトル巧者だけが持つ余裕のなかにある、また別の意味での余裕=油断を許さない緊迫感が伝わってくる。本当に目まぐるしい。 筆者個人としては、前述の“+αの返し”という点で、NAIKA MCに軍牌が上がったかと思っていたが、結果は2-3の僅差で輪入道が勝利。とはいえ、敗退したNAIKA MC自身が「北関東はね、言い訳はしないんで。潔く負けを認めますよ」とコメントを残しているのだから、視聴者サイドから後腐れが残ることは言えない。その後すぐに「もう一本あるんでしたっけ?」と、そしらぬ顔で尋ねたオチまで含めて、本当に好きにさせられてしまう人柄だ。 同バトルをもって、まずはTEAM神奈川の決勝戦進出が確定。TEAM北関東からは、FORK直々の指名でMC☆ニガリa.k.a赤い稲妻を吸収。「親戚の集まりみたいで落ち着かなかった」という古巣を抜け出して、決勝戦でもリリカルなラップを見せられるか。 ・KANDAI v.s. だーひー、“拾われた組”によるパンチラインの応酬戦 続いては、TEAM東海(呂布カルマ×泰斗a.k.a.裂固×楓×KANDAI×歩歩)とTEAM兵庫(CIMA×P-PONG×Sirogaras×FEIDA-WAN×だーひー)による、準決勝2試合目。今回のオンエアのなかでも、“ある注目テーマ”とともに取り上げたかったのが、この試合の1戦目である。その注目テーマとは、だーひーのラインを借りれば、〈拾われた組〉による対決だ。 1戦目で相見えたのは、だーひーとKANDAI。先攻はKANDAIで、ビートは、晋平太「Check Your Mic」。パンチラインの応酬戦となったハイライトをご覧あれ。 KANDAI:俺らのチームがそんなに暗いか 暗いところアンダーグラウンドからのレペゼン/いらねぇんだよ 【コンプラ】に【コンプラ】 これが俺からの贈った愛だ だーひー:本末転倒 お前らブラックミュージックだろ いらねぇの?【コンプラ】に【コンプラ】 欲しいんじゃねえの? 俺たちによく言えたな/俺 以外じゃねぇ 俺も心は真っ黒だぜ KANDAI:俺は中身もTシャツも真っ黒だぜ まっすぐな目 俺が起こす番狂せ 俺も粋がるぜ 東京に名が渡るぜ イニシャルK/お前がだーひー 舐めんじゃねぇ 関西 1番ヤべぇのはHIDADDY だーひー:ありがとうね 俺たちの味方 先輩の名前で上げてくれて お前は東京にかましに来たんだろ? 俺は全員の首地元に待って帰りに来たんだよ 地元の事 忘れちゃねぇ 俺ら2人 拾われた組だからやる事は分かってる もう何にもねぇとか思ってたら 背負わなきゃいけねぇ西日本がここにあったぜ だーひーの2バース目に関しては、もはや構成が整然としすぎていて、全文引用をさせてもらった。相手の揚げ足を取り、自身のスタンスとの違いを示したところで4小節、そこから今度は相手に共感を示し、その上でさらに感動を誘うパンチラインを残すところでもう4小節。完璧な構成だ。ユーモアの方向ではなく、単純に言葉の“刺さり具合”という意味でのパンチラインの撃ち合いとなったこのバトル。1バース目ではお互いに解釈の不一致を攻撃しながらも、そこから流れが大きく変わり、最後には“拾われた組”という同じ境遇で手を取り合う同志に。 お互いが所属チームのオリジナルメンバーでない場合のバトルで、そのあたりの話題に触れるものか気になっていたところだが、最終的なトピックとして〈背負わなきゃいけねぇ西日本がここにあったぜ〉など、また新たに“背負うもの”を見つけたという点に落ち着いた。このあたりや、あるいはエリア関係なく、自分自身をレプリゼントする姿勢が今後も、いわゆる“拾われた組”のバトルに対するモチベーションとなるのかもしれない。 そのほか、Benjazzy(BAD HOP)が、クルーの冠バラエティ番組『BADHOP 1000万1週間生活』(ABEMA)にて、マーチを着用していたことで話題となった韻踏合組合のメンバー・HIDADDYのネームドロップがあったところで、カメラが瞬時に、彼の立ち上げたアパレルショップ・一二三屋で働く、TEAM兵庫側のCIMAを映したのもさすがだった。 前述の通り、だーひーは構成も完璧なバースを残しているわけだが、バトルの流れを通して見るとKANDAIには及ばず。結果は、5-0でKANDAIが勝利。この後、KANDAIはP-PONG、FEIDA-WANを続けて破り、合計3連勝に。次回、ここまで負けなしのSirogarasと、勢い衰えぬ“昇竜対決”を迎える。先に地に足が着くのはどちらか。
一条皓太