『プロセカ』「Bad Apple!!」実装が話題に ネット文化を牽引したVOCALOIDと『東方Project』の邂逅
ボカロ×東方、約20年の時を経て遂げる邂逅
加えて、『プロセカ』への配信と前後してゴールデンウィーク初旬に開催された『東方』作品オンリーの同人即売会『令和六年(第二十一回)博麗神社例大祭』にて、ビートまりお自身が「超最終鬼畜妹フランドール・S」「Help me, ERINNNNNN!!」を収録した新譜を自サークルで頒布。アプリゲーム外でこれらの楽曲をデータ視聴できるのは現在このCDのみ。つまり楽曲の所在自体は、あくまで『東方』カルチャー内に重きが置かれている状態とも言える。 重ねて「Help me, ERINNNNNN!!」に関しても、プロセカ実装に際し2種類のMVがYouTubeにて公開。初音ミク歌唱によるゲームサイズの通称“セカイ版”と、ビートまりお自身の歌唱によるフルサイズ版。それぞれに映像も用意されており、VOCALOIDと『東方』、どちらのコンテンツのファンも楽しめる形となる。 さらに「超最終鬼畜妹フランドール・S」については、ビートまりおが同即売会で今回の新録版をリードトラックとした、収録曲が全て同曲のアレンジ・リミックスとなるコンピレーションCDを頒布。参加メンバーには元より『東方』アレンジ曲を多く手掛ける熟練クリエイターのみならず、cosMo@暴走Pや柊マグネタイト、かめりあに原口沙輔といった、新旧問わず熱い支持を受けるボカロPの面々も名を連ねている。まさにVOCALOIDと『東方』、二つのネットミュージックカルチャーが渾然一体となった作品と言える。 かつてのニコニコ動画を中心としたインターネット上では、過激な各コンテンツファンの対立図式が描かれることもしばしばあったVOCALOIDと『東方』。それが約20年の時を経て、今回のような邂逅を果たしたことに感慨深さを覚えるリスナーもおそらく大勢いるに違いない。同時に双方のコンテンツが誕生から数十年経つ今もなお、まだまだ新規ファンを獲得する魅力を放ち続ける理由は、各カルチャーの懐の深さもその一因であることだろう。 一つの出来事を起爆剤とし、各コンテンツを支えるクリエイターや楽曲に親しむリスナーそれぞれの間で新たな交流が生まれる点こそ、このようなコラボならではの醍醐味だ。様々な意味で“夢のタッグ”ともなった二大インターネットコンテンツの邂逅。ここから今後さらにまだ見ぬカルチャーの潮流が誕生しうる可能性にも、大いに期待したい。
曽我美なつめ