<最高の花道へ―センバツ’22・東洋大姫路>支える人たち 寮生に夕食提供した 久後照美さん(69)=姫路市 /兵庫
◇家庭の味で体づくり 勝ち進み大きな花を 姫路市町田の中華料理店「くうちゃん」の店主、久後照美さん(69)は2019年までの約10年間、東洋大姫路の野球部の寮生たちの食事を支えた。単身赴任の藤田明彦監督(64)や三牧一雅部長(65)も常連だ。 藤田監督らが店によく食事に訪れていたことから、寮生の練習後の夕食を依頼された。週に1~2回、寮生が多かった時は約40人分の食事を用意した。中華料理を扱っているが、自宅を離れて暮らす選手たちに「家庭の味を味わってもらいたい」と、肉じゃがやハンバーグ、カレーなどのメニューも提供。体づくりのため、選手用の大きな茶わんにご飯を盛り「おかわりせえよ」と声をかけて渡した。試合の前日には「頑張れよ」と店から送り出した。 食事を済ませた寮生の名前に丸印を付ける帳簿は、今でも大切に保管している。「名前を見ると一人一人の顔が浮かぶ」と懐かしむ。実家から通っていた選手も多く訪れ、店内の壁にはプロ野球に進んだヤクルトの原樹理投手が高校時代に書いた色紙や、ソフトバンクの甲斐野央投手のサインも飾られている。今でも姫路に帰ってくる度に、店に食事に来る選手も多いという。 寮生の食事場所が他店に変わってからも、久後さんは店の営業時間前や昼の休憩時間にグラウンドに足を運び、練習を見守り続けてきた。「今年は行けるかも」と期待はしていたが、センバツ出場の決定を知った時は「やった」とガッツポーズをしたという。3月末に退任する藤田監督と三牧部長を思い、「また甲子園の土を踏むことができるのでうれしい」と喜ぶ。「1勝してつぼみを付け、2勝目、3勝目と大きく花を咲かせてほしい」とエールを送る。【後藤奈緒】 〔神戸版〕