知床観光船事故2年 犠牲者の追悼、葛藤する斜里
【斜里】オホーツク管内斜里町の知床半島沖での観光船沈没事故で、死者・行方不明者26人の追悼を巡り、観光関係者や町職員が複雑な思いを抱いている。事故発生から2年となる23日の追悼式は一般参加も可能とし、町は幅広い参加を呼び掛ける。一方で、式終了後には役場庁舎に2年近く設置してきた献花台での花束や手紙の受け付けを終えると決めた。「多くの犠牲者を出した事故を忘れてはならないが、前に進むため区切りも必要」。地元関係者たちは葛藤し続けている。 「雪が解けて暖かくなると、事故発生当時のことを思い出してつらくなるが、地元として避けて通ることのできない日だ」。追悼式会場となる斜里町ウトロ地区の町ウトロ支所。町とともに式を主催する知床斜里町観光協会の会長野尻勝規さん(55)はそうこぼす。 2年前の事故発生直後、ウトロ地区では国土交通省などが乗客家族向け説明会を開いた。野尻さんも、沈没した観光船カズワンの運航会社知床遊覧船の桂田精一社長(60)らと出席。肉親を失った道内外の乗客家族の悲痛な声に接した。 昨年の追悼式。すすり泣く声が乗客家族の座る席から聞こえ、野尻さんは胸を締めつけられた。式終了後、乗客家族の1人が当時町長の馬場隆さんに「知床、頑張ってよ」と声をかけたことを知り、救われるような思いにもなった。2度目の追悼式を前に「被害者の家族が事故に思いをはせ、地元側も事故の再発防止を誓う場は必要不可欠だ」と意を強くする。