【稲とアガベ】秋田・男鹿に誕生した新しい醸造所「日本酒で雇用を生み、若者を呼ぶ。そして街を復興する」
「ナマハゲの町」として知られる秋田県男鹿市に誕生した新しい酒蔵「稲とアガベ醸造所」。過疎が進み、シャッター通りと化している男鹿の町が、稲とアガベによって少しずつ変わり始めています。 稲とアガベが進める多角的な経営と、100年後を見据えた地方創生の取り組みを追います。
過疎の町・男鹿に4000人が集結
1日の平均乗降者数が400名程度(男鹿市地域公共交通網形成計画〔2019年3月〕)のJR男鹿駅前の広場に2022年8月、約4000人が集まりました。お目当ては「クラフトサケブリュワリー協会」が主催するイベント「猩猩宴(しょうじょうえん)」です。協会は副原料を加えた新しいお酒「クラフトサケ」を造る醸造所の団体で、稲とアガベも会員です。
会場では、全国7蔵のクラフトサケ醸造所のお酒やフードが提供されたほか、男鹿名物「なまはげ太鼓」などの音楽ステージが展開されるなど、まるでお酒を中心とした「フェス」のようなにぎわい。来場者たちはグラス片手に、穏やかな男鹿の夏の一日を楽しみました。 活気ある会場の様子に目を細めるのは、男鹿市長の菅原広二さんです。 菅原 「『猩猩宴』のようなイベントは、我々行政の人間からは出てこない発想です。岡住さんが中心となって企画し、実際に多くの人が来てくれたのは、大変な成果だと思います。彼のような若者が、県外から移住して起業し、地域を盛り上げてくれるのは、市としてとても喜ばしいことです。 また、彼の動きに刺激を受けたのか、若者が男鹿市内でコワーキングスペースや宿泊施設を立ち上げるなど、新しい動きも出てきていると聞いています。男鹿市の起爆剤になるよう、市としてもしっかりサポートしていきたいです」
男鹿は「もったいない」土地だ
秋田県男鹿市は、秋田西部にある男鹿半島のほぼ全域を占めます。ユネスコ無形文化遺産「男鹿のナマハゲ」や、日本海に面した美しい景観が知られており、かつては秋田県屈指の観光スポットとして人気を集めました。 しかし人口は年々減少し、2020年には2万6000人程度と、ピーク時の半分以下に。この人口減少が続くと、町の機能を維持すること自体が困難になる、そのような危機的な状況のエリアです。