「去年1回死んだんです」たった一人で“月面探査車”を開発し今年ついに月面へ “諦めない社長”の壮絶な半生【ソラテレ夢宙人】
■先にも後ろにも光が見えない日々
―――「YAOKI」開発は大変だった? 開発5年目あたりが精神的に一番きつかったと思います。アルテミス計画も発表される前で、月に行くプロジェクト自体がなかった。JAXAの関係者に「いくら良い月面探査車を作っても、実現する見込みはないと思うよ」と言われたりもしました。 会社を辞めて時も経ち、50歳を超えていました。深いトンネルの中で後ろを見ても光が見えないし、先にも光がないし、どちらにも光が見えない。追い込まれ過ぎて、歩くこともできない日もありました。 ほとんど収入もなく、乏しい貯金で開発を続けていたので「自分は間違っているんじゃないか」と感じたり、全く何も成すことができずに、惨めな老後を迎える疑念も湧いたりしました。
■NASAに直接メールしてアピール
脱サラから8年後の2019年。主要特許を出願し、月面探査車の原型が完成。二輪方式を採用した超軽量・超小型の探査車でカメラを搭載。月面の映像を地球へと送信することができる。名前は「YAOKI」。荒れた月面の大地で何度転んでも起き上がるよう、そして自らの挑戦の意思をこめ「七転び八起き」から取った。
―――完成してからは? 特許を出願してすぐに、少しでも多くの人に知ってもらえるようにプロモーションビデオを撮影して、YouTubeにアップロード。さらにNASAをはじめ思いつく限りの宇宙関係者にメールをしました。 するとアメリカのある企業から「やる気があるなら話を聞くよ」と連絡がありました。それが、NASAのアルテミス計画に月面着陸船が採用されたメーカーだったんです。妻は「詐欺じゃないか」と疑っていましたが(笑)
■将来は100機を月面へ
―――YAOKIが月面に行けば、世界が広がりますね? 小さく作った分、輸送コストも下がるので群探査が可能になる。将来的には100機以上を月面に送り、連携して調査を行うのが目標です。 ―――どこから操作するんですか? 通信能力とカメラを備えているYAOKIは、地球からの遠隔操作が可能です。この遠隔操作能力と群探査を活かした「擬似月面旅行」を提供したいと考えています。