県が有形文化財に安房の9件を指定・登録(千葉県)
県教育委員会は、5件を県指定有形文化財に指定・名称変更することを決めた。安房地域では、館山市安東の「千手院石造宝篋(ほうきょう)印塔」など3件を新たに指定。県登録文化財には、同市の県立安房高校旧管理棟(無弦館)と、鴨川市内の武志伊八郎信由(初代・波の伊八)関連作品5件を含む8件を登録した。 千手院やぐら群の上に安置される石造宝篋印塔は、南北朝時代前期のものである可能性が高く、県内に現存する宝篋印塔の中で欠損がない個体としては最古。御家人などの有力者と密接な関係をもって造営されたと推定され、県内の歴史・文化史上極めて貴重だという。 同所やぐら内に安置される、細部まで丁寧に仕上げられた石造の千手観音菩薩坐像と、制作当初の彫刻面がよく保存されている地蔵菩薩坐像は、南北朝時代の在銘石仏として貴重であり、当時の石彫の高い制作水準を示す優品として価値ある資料としている。 また、館山市出野尾の小網寺の鋳銅密教法具20点が、昨年6月に国の重要文化財に指定され、県指定が解除されたため、それ以外の「蓮華形柄香炉」に名称変更を行う。 従来の「指定」文化財制度を補完して、幅広く文化財を保護するために、昨年度から取り組んでいる県登録文化財も新たに発表された。
県立安房高校旧管理棟(無弦館)は、昭和6年に建てられた県立安房中学校の木造校舎の一部を、56年の新校舎建設に伴って移築保存。校長室や応接室の中心飾りなどに当時流行したアールデコの意匠を採用するなど、洋風モダンデザインを取り入れた建物で、県指定有形文化財の県立安房南高校旧第一校舎にもよく似ている。 江戸時代の安房の名工「波の伊八」関連作品は、鏡忍寺(鴨川市広場)の蟇股(かえるまた)と力士像、心巖寺(同市貝渚)の欄間「竜」と木鼻「象」、大山寺(同市平塚)の倶利伽羅竜の5件。19歳ごろの最初期から円熟期を迎えた50代前半までの作品が登録された。 この結果、県指定有形文化財は351件、県登録有形文化財は10件となる。