バイオリンを駆使して縦横無尽に飛び回ってオーケストラ団員を探す 2Dアクション『Symphonia』が美しすぎる。殺意マシマシな高難度ステージという“緊張”と、胸を打つクリア演出という”緩和“が「強烈なカタルシス」を生む
足場を乗り継いでゴールを目指す、いわゆるプラットフォームアクションゲーム。 このジャンルを遊んでいて一番嬉しいのって、何度も何度も挑戦してやっとの思いで「ゴールに辿り着いた瞬間」ですよね。 『Symphonia』画像・動画ギャラリー 本作『Symphonia』もそんなゲームなのですが、特徴的なのはゲーム全体の難易度の高さと、セリフやテキストを減らし、音楽とアニメーションで表現されるストーリー。正直かなり難しいし、ストーリーも一見しただけでは分かりにくいんです。 しかし、そういった要素も全て「ゴールに辿り着いた瞬間」に感動してもらうためのデザインなのではないか?と思うほどに、本作の「ゴールに辿り着いた瞬間」の達成感が強烈です。高難度なステージをクリアして肩の力がほっと抜けるという意味もありますが、それと同じくらい、豪華な演出による感動があります。 上記の動画でも、オーケストラ演奏とアニメーションが融合した演出のクオリティは感じていただけるかと思います。ですが、この演出が最も効果を発揮するのはやっぱり「自分でプレイしてゴールに辿り着いた」ときです。 先に触れた通り、本作はゴールに辿り着くまでの道中はかなり難しいですし、ストーリーの情報量もあえて絞っています。だから「ムズいし!話もよく分かんないよ!」って思いながら進んでいくんですが、リプレイを繰り返して物語が詰まった背景を何度も見るうちに、ゴールする頃には話の流れが理解できるようになっているんです。 このムズい&分からんがスッキリすると同時に、上記の動画のような、見ても聴いても楽しい「ご褒美」のような演出が入るので、ステージをゴールする度に映画をひとつ見終わったようなカタルシスがあります。 そんな、美しくも難しい本作の「強烈なカタルシス」を生む理由を、プレイの過程を掘り下げてさらに詳しく見ていければと思います。 文/白熊のヨゥ 編集/anymo ■殺意マシマシなギミック、タイミングはシビア。だからこそゴールしたときの喜びも「ひとしお」 『Symphonia』は足場から足場へ跳び移りながらゴールへ向かう、いわゆるプラットフォームアクションゲーム。戦闘要素はなくひたすらゴールに向かっていくシンプルな内容なんですが、難易度としてはかなり高め。しかし!あえてこう言わせてもらいましょう。 このゲームは、そこがいい! 「なんでこんなにトゲだらけなんだ?」と思ってしまうほどステージはヤル気たっぷりだし、ジャンプのタイミングや方向入力など微妙な調整をやり続けることになるので集中力が求められます。 だけど、かかる力が強ければ強いほどバネが勢いよく跳ねるように、A高難度な操作をやりきってプレッシャーから解放されたときの喜びもまた強烈! 主人公の能力は縦方向、もしくは横方向に「跳ぶ」ことにフォーカスされています。特徴的なのが、音楽家である主人公が持つバイオリンを使ったアクション。バイオリンを弾くことでギミックを作動させるのはもちろん。 弓で地面を突いて高く跳んだり、 クッションにぶっ刺して壁に留まったり、 そのまま反動で大ジャンプをしたり、 バイオリンってなんだっけ……?と思いたくなるほどの大活躍を見せます。特徴的なのは「反動で跳ぶ」アクションで、弓を刺せるクッションさえあれば、壁や天井だろうが、動く床だろうがどこからでも跳躍ができるようになっているのが面白い。 慣れてくると、床、壁、天井を滑らかに行き来しつつギミックとすり抜けていくこともできるし、クッションのある場所なら、ステージの途中でも留まってギミックの周期を計ったり動きを観察することも可能。 最速の周期に間に合うように素早く動くのはやはりアクションゲームの醍醐味ですが、一度立ち止まってギミックやステージを観察してみるのも大事。さらに、ストーリーを理解することに役立ちます。 美麗な世界を構成する、ステージも見てみましょう。 茨が生い茂った温室に、 怪しげな工場、 薄暗いメンテナンス通路、 いや、本当になんでこんなに??って思うほどトゲトゲしてますよね。 もちろんただトゲを飛び越えるだけではなく、乗ってからしばらくすると抜け落ちる床や、一度乗ったら逆戻りできないレール、ターザンジャンプができる振り子などさまざまなギミックが盛りだくさん。 主人公のアクションは「跳躍する」というシンプルな点にまとまっているんですが、高さや飛距離が異なるアクションをしっかり使い分けないといけないほど繊細な調整が必要というわけです。 また、ステージは基本的に一本道なんですが、収集アイテムを獲得するための高難易度コースへの分岐路があります。分岐先はかなり容赦のないステージ構成になっているのでさらなる歯ごたえを求める人にもぴったり。 今回のプレイでは収集アイテムに関しては、取れそうなら取る、分岐路は行く方法が分かれば行く、という方針で進めたんですが、それでもゴールに辿り着くまでに1ステージ1時間弱はかかりました。 このヤル気たっぷりなアスレチックを1時間程度やり続けるとなるとかなり集中力を求められるし、疲れも溜まります。休憩したほうがいいとは頭では分かっていたものの、休憩を挟むことで緊張が解けてしまうのが惜しいような気がして、一気にプレイしていました。 ■視覚と聴覚のみで表現されるストーリーは「分からない」からこそ引き込まれる 本作のストーリーはあえて情報量を絞り音楽やジェスチャーといった視覚や聴覚に訴える作りになっています。「世界を救うために各地を巡り、音楽家を集めてオーケストラを結成する」という目的こそ序盤のうちに明かされるのですが、それ以外の部分は明確には説明されません。 なので遊んでいるときは「よく分からないな」と思いながら進めていたのですが、後になって考えるとこのゲームの場合は それでいい……!! プレイしていて思ったのは「分からないのであれば、自分なりに感じ取るしかない」ということだったんですが、そこがゲームの難易度の高さともマッチして物語に引き込まれるような作りになっています。 というのも、音楽家集めのために巡る各地では、そこに住まう音楽家に関するストーリーが展開されるのですが、ゲーム中に挟まる幕間劇はもちろん、背景にもストーリーを理解するヒントが潜んでいるわけです。 今回は、あるステージのスタートからゴールまでの流れを、画像と最低限の補足を交えながら紹介してみようと思います。ぜひ、どんな物語なのか想像しながら画像を眺めてみてください。 注目していただきたいのは、「ステージ背景の昼夜の流れ」と「背景にいるロボットたち」です。 働くロボットたち、糸だらけの世界、白い音楽家の背後に積み重なる糸。何かしらの問題がこの場所で起きていて、そこに音楽家が関わっているということは、なんとなく伝わったと思います。 背景に物語が詰まっているからこそ、集中してギミックの周期などを観察するなかでふとした瞬間に「あぁ!こういう話だったのか!」と閃くことがあるんです。 そして各ステージの物語は、ゴール後そのステージの音楽家とのセッションをもって完結するようになっているのでムズい&分からんというモヤモヤとした感情が同時に解消される。このスッキリ感こそ、ゴール到達時の強烈なカタルシスの理由になっています。 ■実は難易度調整も可能。でもやっぱりデフォルトの難易度で挑戦してほしい さんざん「難しい」と言っておいてなんですが、本作には難易度調整を行うオプションが存在しています。早ければ開始30分程度で満たせる程度の条件で、ダブルジャンプの有効化と、ゲーム内の時間を遅くするという機能が解禁されます。 ゲーム速度の変化は主人公の操作も含め遅くなるので扱いが難しいですが、ダブルジャンプは滞空時間を伸ばせるというだけで便利ですし、他のアクションと組み合わせるとギミックを無視して先に進んでしまえるほど強力。 本作をより多くの方にオススメする以上、「難しければこちらの設定を有効にするとよいでしょう」と言わせてもらいつつも、本作に限って言えば「楽になるけど、ちょっとだけ待ってほしい」というのもホンネだったりします。 上の画像にも書いてあるとおり意図しない挙動が起こる可能性もありますし、最初に触れた通り、本作はステージをクリアした際のゴール演出を見て感動してもらうためにあらゆる部分がデザインされていると感じる作品です。 高めの難易度は、何度も同じ場面に挑戦しつつギミックを観察する中で背景にも注目してもらうため。そして情報量を絞ったストーリーに関しても、あえて情報を絞ることでプレイヤー自身が感情移入しやすいように工夫がされています。 そしてそれらの工夫が、ゴール時のオーケストラとアニメーションが融合した演出というご褒美と相まって最高のカタルシスを生み出しているので、その感覚を味わってもらうためにも、どーーーーーしてもクリアできない場合を除いて設定は弄らずにプレイしてほしいというのが正直な所。 苦労も大きいけど、達成感も強烈。それは、ラストのコンサートからエンディングまでの流れで感極まって無言で涙していた私が保証させていただきます。 実を言うと、プレイ当初「オーケストラ音楽」と「高難易度プラットフォーマ―」というふたつの要素がどういう反応を起こすのか全く想像できませんでした。 しかし実際にプレイしてみると、難易度が高いからこそステージをクリアしたときの達成感もひとしお、ギミックを観察する中で背景に溶け込んだ物語の断片に気づけたり、セリフやテキストを減らし視覚や聴覚に訴えることでストーリーを強く意識できたりして面白い。 あまりの難しさに「ん゙ん゙ん゙~ッ゛!」と声にならない叫びが出たり「落ち着け、落ち着け……」とブツブツ言ったりするほど追い込まれたりもしましたが、それでもやめずに遊べたのは音楽とアニメーションが融合した素晴らしい演出というご褒美があってこそ。 「高難易度プラットフォーマ―」というワードにビビッと来た人はもちろん、何か記憶に残るようなゲームをプレイしたい人にもピッタリな『Symphonia』はPlayStation5及びPlayStation4、また、PC(Steam)にて配信中です。
電ファミニコゲーマー:白熊のヨゥ
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