コロナ禍で売上激減、廃業寸前のピンチからなぜ?「元祖 鯱もなか本店」が奇跡のV字回復を果たしたワケ
「愛知県の人気の和菓子」として、老舗でありながら今が旬の「元祖 鯱もなか本店」(名古屋市中区)。地元アイドルやJリーグ、映画などとのコラボ商品も次々に発売。 【画像】売上は2倍にUP! ロングセラー「鯱サブレー」が新しくなった 2024年にはなんとアイドルグループ、ももいろクローバーZとのコラボも! ニューアルバム発売記念として、全国ご当地菓子5品とのパッケージコラボのひとつに選ばれました。 さらにXのフォロワー数は5万人超。常に話題を振りまき、多くのファンを獲得しています。 そんな「元祖 鯱もなか本店」ですが、実はほんの4年ほど前は“廃業寸前”の状態でした。後継者はおらずコロナ禍で売上は激減。100年以上続いたのれんを下ろすのも時間の問題だったのです。 ところが、そこから奇跡のV字回復を果たします。売上はどん底だった時期から実に10倍増! 一体どんな方法でピンチを乗り越え、業績を飛躍的にアップさせたのでしょうか? そして、なぜ今こんなに多くの人に愛されているのでしょうか?
◆歴史がある割に地元では“知る人ぞ知る”存在だった
「元祖 鯱もなか本店」は1907(明治40)年創業。1921(大正10)年に鯱もなかを売り出すと、たちまち人気の名古屋土産に。戦前までは、青柳ういろう、納屋橋饅頭(現在は販売休止)と並んで名古屋土産御三家に数えられる定番でした。 しかし、名古屋城や名古屋駅などの売店への卸売りに特化していたため、買い求める人のほとんどが観光客。そのため、歴史がある割に地元では知る人ぞ知る存在でもありました。 この販売戦略が、コロナショックの影響をより深刻なものにします。お出かけができない世の中になり、お土産需要がほぼゼロになってしまったからです。
◆4代目の思いと戦略がピンチを救う
ところが、コロナ禍のピンチがV字回復のきっかけにもなったのですから、世の中分からないもの。 当時SNSでは、売るあてがなくなった特産品を購入して生産者を支援し、フードロスを削減しようという通販サイトがいくつも設立されました。「元祖 鯱もなか」もそこに商品を出品。 するとおよそ200件もの注文が寄せられたのです。 「お客様から『おいしかったです』『これからも頑張ってください!』という温かい声をいただきました。それまで卸売りが中心で直接お客様の声を聞く機会がほとんどなかったので、皆さんのメッセージがより心に響きました」 こう振り返るのは3代目の長女、古田花恵さん。当時は専業主婦で、生家の仕事は時々手伝うくらい。父親も大変な和菓子作りを娘に継がせるつもりはありませんでした。 しかし、お客さんの声にふれたことで「こんなに愛してもらっているうちのお菓子を私の代でなくしてはいけない!」という気持ちが膨らみ、家業を継ぐことを決意します。 以来、ホームページや通販サイトをリニューアルし、SNSでも情報をこまめに発信するように。体制を整えた上で、2021年8月に花恵さんが正式に4代目に就任します。 これをプレスリリースにまとめて地元メディアなどに送ると、ネットニュースに取り上げられ、これを機に次から次へと取材が舞い込むことに。 「専業主婦が実家の和菓子屋を継ぎ、コロナ禍の危機にもめげず奮闘している」というストーリーが、暗いニュースばかりの時世にあって大きな共感、そして応援したいという“推し活”の心理を呼び起こしたのです。