「共に勝利しよう」のプーチンロシア軍大攻勢間近...! 崖っぷちのウクライナは止め切れるのか?
2022年9月には電撃的な機動作戦で大きく領土を奪還することに成功したウクライナだが、昨年6月の反転攻勢が不調に終わり、その後は守勢に。そして今、ロシア軍の大攻勢が目前に迫る。兵員も弾薬も兵器も不足する中、この危機を耐え抜いて次の好機をつくることはできるのか? 【写真】防衛線を死守するウクライナ兵 ■兵力損耗・兵器不足で押し込まれるウ軍 「共に勝利しよう」 5月7日に行なわれた通算5期目の大統領就任式で、ロシアのプーチン大統領は国民にそう呼びかけた。 ウクライナ軍(以下、ウ軍)は昨年6月からの反転攻勢作戦で大規模な進撃や領土奪還を達成できず、その後、戦線は膠着。昨年秋頃からは、徐々にロシア軍(以下、ロ軍)の攻勢が目立ち始め、攻勢と守勢が入れ替わってしまった。 ロ軍は現在、ドネツク州のバフムト(昨年5月に制圧)とアウディイウカ(今年2月に制圧)を足がかりに攻勢を続けている。防衛省防衛研究所・米欧ロシア研究室長の山添博史氏が解説する。 「昨年6月の段階では、ウ軍の反転攻勢に対する期待が高かったのですが、現実には西側諸国からの武器支援も、大きな部隊による諸兵科連合作戦の訓練もまだ不十分でした。それでもロ軍が開戦当初の損害から回復して戦力を高める前に作戦を始めるしかありませんでした。 しかし実際は、ロ軍は塹壕と地雷による強固な防衛線、ドローンによる監視・攻撃能力や電波妨害能力といった守勢作戦の準備をすでに固めており、ウ軍は大きな戦果を得ることができませんでした」 そして現時点では、ウ軍の深刻な人的消耗、弾薬や対空ミサイルなど各種兵器の不足に対して、ロ軍のほうが相対的に戦力を整備できており、近くロ軍の大規模攻勢が始まると予測されている。 「昨年のバフムトの戦いと、今年のアウディイウカの戦いの途中までは、ロ軍の戦い方は囚人兵をひたすら突撃させるなど、兵士の多大な犠牲に依存したものでした。 ところがアウディイウカを制圧する段階では、航空戦力(爆撃機)を有効に使い、滑空爆弾による空爆で大きな戦果を挙げるようになりました。ロ軍のこの戦術的変化は、ウ軍にとって困難な状況を生んでいます。 さらに、ウクライナ国防情報総局のスキビツキー副局長は英エコノミスト誌のインタビューで、ロ軍は大規模攻勢に備えて51万人超の兵力を投入する準備ができており、それに対してウ軍は戦線を維持するための兵力資源も弾薬・兵器も足りていないと話しています。 ロ軍はウ軍の状況が改善する前に、できる限り敵を叩いて進みたいと考えているはずで、おそらくドネツク州全域の制圧までは見据えているでしょう」(山添氏)