高橋ヨシキが映画『デッドプール&ウルヴァリン』と『エア・ロック 海底緊急避難所』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! マーベルの異色ヒーローがまさかのタッグ!&海底に閉じ込められた男女7人のサバイバルスリラー!&「ヒトラーの南米逃亡説」を基に描くコメディ? * * * 【写真】『エア・ロック 海底緊急避難所』のレビューにも注目! 『デッドプール&ウルヴァリン』 評点:★3点(5点満点) メタ的な楽しさと引き換えに失われたもの デッドプールはマンガや映画の「内側」と「外側」をメタ的に行き来できる変則的なキャラクターで、だからマーベル・コミックの版権にまつわるあれこれをギャグとして語ったり、そのときどきの状況について観客に直接語りかけたりすることができる。 それはそれで面白いのだが、本作ではそういうメタ的なギャグと、一定のシリアスさを持っているはずの映画内のドラマとのバランスが悪く、そのため映画的なカタルシスや盛り上がりが失われてしまっている。 たとえば本作のデッドプールは身近な9人の人々が「自分にとっての全世界」であり、だから彼らを救うべく自己犠牲的な行動に出るという。ところがその身近な人々とデッドプール本人との絆は主に断片的なフラッシュバックによってしか描かれないため、単独の映画としてドラマが成立していないように見える。 また本作にはMCU以前のマーベル・コミック原作映画のキャラクターが何人かカメオ出演しているが、それが「顔見世」以上の効果をもたらしていないのが、もったいないというか、逆に「登場しなかった」キャラクターについて「なぜ登場できないのか」が気になってしまうのもノイズに感じる。 STORY:日本刀と拳銃を武器に戦う不死身のヒーロー「デッドプール」は、ある日、世界の命運をかけたミッションに挑むことに。その助けにと彼が助けを求めたのは鋼鉄の爪を持つ屈強な戦士「ウルヴァリン」だった。 監督:ショーン・レヴィ出演:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマンほか上映時間:128分 全国公開中 『エア・ロック 海底緊急避難所』 評点:★2.5点(5点満点) 画作りは見応えがあるがドラマが貧弱 飛行機が海に墜落した! 機体に水が入ってきた! でも気圧もあってある程度のところで浸水が止まった! と思ったらそこは海溝の崖っぷちだった! おまけにサメも来た! さあどうする! という絵に描いたようなポップコーン・ムービーで気楽に楽しめる。 監督のクラウディオ・ファエは以前に視覚効果プロデューサーを務めた経験もあり、そのためVFXを駆使した画作りは見応えがあるし、水中撮影もしっかり行なっていてビジュアル的な満足度は高い。 一方でキャラクターは総じて弱い、というか「設定」以上の深みが持たせられていないため、ドラマ的に全然盛り上がらない。 予算の都合もあると思うが、メインの登場人物がわずか6人程度なのも、パニック映画としては物足りなく感じてしまう。そこに「曲者」的な人物がいないのもその感覚を加速させている。 一人、そういうキャラクターがいないこともないのだが、その人物がわりと最初の方で退場してしまうため、その後のドラマが持たなくなってしまっている。最後に生き残るキャラクターが「属性」によって選択されているように見える点も含め、観客の予想をもっと裏切る展開が欲しかったところである。 STORY:メキシコのリゾート地・カボへと向かう旅客機が事故で墜落、海底に沈む。生き残った7人の男女にとって機内のエアロックの1ヵ所だけが生存可能なエリアだった。襲い来る水圧や酸欠、そして人食いザメから生き残れるのか? 監督:クラウディオ・ファエ出演:ソフィー・マッキントッシュ、ウィル・アッテンボロー、ジェレミアス・アムーアほか上映時間:91分 8月16日(金)から新宿ピカデリーほかにて全国公開予定